来訪者

 この惑星に来てどの程度の時間が経過したのかはっきりしない。

 この惑星の自転により太陽が246回浮き沈みしたことは間違いない。

 未だこの惑星における情報が足りない。

 この惑星に逃げ込んだものの環境不適合により生命維持が困難な状況において、着地点付近に都合よくあった状態の良い死骸が三つ。

 死骸には一部分が損傷を受けているものもあったが、修復し媒体とすることに成功した。一体は損傷が酷いこともあり、共に逃げ込んだ仲間がその体に入ってからしばらくしても反応を示さないことから、修復する間に生命維持できなくなったものとみられる。もう一体は損傷が見られないため一番幼い仲間を住まわせた。

 この死骸が有する記憶が所々使用できない状態なのは、おそらく死骸となってからの時間経過が問題なのであると思われる。

 自身は少なからずこの死骸が持っていた情報から言語や習慣などを理解し使用することが可能だが、仲間については未熟なのか死骸の状態からくるものなのか、殆ど使用できないようである。ただし、テレパシーについては問題なく使用できるので、意思疎通に問題はない。

 この惑星に住まう生物は多種多様に存在するようだが、この死骸となった生物の種族が繁栄しているようである。また、テレパシーは使用できないようだが敏感に反応は示すので、この種族たちから危害を被る危険は無い。幼い仲間でもそれは顕著に確認できている。

 恐ろしいのは万が一にも我々を追ってきている外敵と接触してしまったときである。そうなってしまっては、もうどうすることもできない。

 時間を情報収集に費やしているが、上手く適応していけるかは未知数である。子孫を残しながら、共存していける道を模索するしかない。

 無事に幼き唯一の仲間が戻ってきた。

 幼き仲間は紙と呼ばれる物質に文字と呼ばれる言語を記したものを受け取ったことを伝えた。この惑星でテレパシーにも鈍い者がいるようである。この者がもしかすれば、我々との共存の標となるかもしれない。

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