第14話


部屋の扉が閉まりレオンハート・ラインヘルツが此方を向く。

そして僕へと話し掛けてくる。


「もうやっだー、ミランちゃんご無沙汰なんだもん。あたしどれだけ寂しかったか聞いてよ~、も~う」


皆さん。

展開に付いていけないとか言わないで下さいね?

ええ、このおねぇ言葉を話す超絶イケメンはレオンハート君です。


「ごめんごめん。でも僕のほうも忙しかったんだよ。父上に剣術の訓練や道場にも通ったりして中々時間が無かったんだ」


「あら、そうなの・・。ごめんなさいね、あたしもついミランちゃんに会えなくて気が昂っちゃって・・。」


「いいよ、別にそれくらい。気にしないよ」


「んもう、ほんっとにミランちゃんは変わらないわねぇ」


そういう君は凄い変わったよね。

昔はもっと普通というかあんな風に女性から主導権を奪って席に着かせたりする技なんて無かったし、気障なセリフもバンバン言えるようになったし・・。

まあでも二人きりになるとオネェになるのは変わらないかな?

全く慣れてるけど驚かない訳じゃないんだよ?

だってこんなギャップある?

超絶イケメンで社交界の王子。

しかも侯爵家の跡取り息子で学良し、武良しのサラブレット。

それがオネェってさぁ・・。

まあだからこんな僕とも仲良くなれたのかもしれないけどね。


「レオンも変わってないさ」


「もう・・これでもあたしだって色々変わってるつもりなのよ?」


「はは、レオンはレオンさ。どれだけ変わろうとね」


「・・ミランちゃんあたしを口説いてるの?」


僕はブハッと飲み物を吐く。

どうしてそんな話になる!?


「いや口説いてねーよ!!」


「そう?良かった~、あたしこんな性格だけど男の子って無理なのよねぇ。だからミランちゃんがどれだけあたしの事を思っていてくれてもその愛には答えてあげられないの」


「いやだから!!口説いてねーし!!!」


「ふふふ、懐かしいわね・・昔もこんなやりとりしたわね」


「勝手に勘違いして僕を女装させた時のことだろ?」


「ええ、貴方が私に惚れてると思ったから私も精一杯答えようとして貴方を女の子にしようとしたのよ?」


「あの時は最悪だった・・」


「あら今となってはいい思い出じゃない~?」


「何処がだ!?やられた方はいい迷惑だ」


「ふふふ、ミランちゃん可愛かったわよ~?」


「僕は男だ!!」


「アタシだっておとこよ!?」


「全く・・ほんとに変わってないよ・・レオンは」



他愛も無い昔話を続ける。

懐かしい記憶が蘇る。

初めてオネェ言葉で話された時。

それを見て驚きつつも平静を装っていた僕。

それから急激に仲良くなった僕達。

唯一この世界で友と言える者との時間は非常に楽しく直ぐに時間が過ぎていく。



「・・でね、その時あたしが投げた兜の鎧が見事団長の顔に・・」


「悪い。レオンちょっといいかな?」


「なーにミランちゃん?まさかあたし以外の男の話でもするわけじゃないわよね?」


「違うよ。レオンはそのさぁ・・どうなのかなって思って」


「やっぱりミランちゃんあたしの事性的な目で見て・・」


「だああああ。違うって!!ただ僕はやっぱりレオンは父親の後を継いで軍に入るのかって聞きたかっただけだよ!!」


「あら、あたし軍属になんかならないわよ?」


「え?・・なら文官とかで大臣でも目指すの?」


「どっちもパスよ。パス。文官は面倒だし大臣とかもっと面倒よ。正直、こんな時は侯爵家に生まれたのを後悔するわ・・」


そう言うレオンの顔が少し陰る。

此奴も苦労しているんだなと、改めて実感する。


「あたしねぇ。ドレスの商いを始めようと思うの」


「ドレス・・?」


「ええ、と言ってもね。ドレスだけじゃなくて衣服全般や装飾品も手掛けたいの。女の子っていうのはね。ちゃんとその娘に合った物で着飾らないと駄目なの。折角可愛い娘でも着てる服の性でその魅力がちゃんと伝わらない事があるの。だからそういう女の子のための店を開きたいのよ!!」


先程とは打って変わってレオンの顔はキラキラと輝いていた。


「でもそれって大変じゃないの?」


「既にコロコン商会には出資の話を持ち掛けて業務提携の打診はしてあるし、貴族の令嬢の何人かはあたしのお金でドレスやアクセサリーをコーディネートしてプレゼントしてるの。それも相まって今やあたし社交界ではちょっとした有名人なんだから!!」


「うん。先刻の様子で何となく分かる」


「後は早めに実績を積んで稼げることを証明しないといけないの・・まあコロコン商会の業務提携の話が通れば取り敢えずは安心だけどね。」


「そうか・・レオンは頑張ってるんだなぁ」


ああ、僕も頑張んなきゃなぁ。

そう考える僕に優しい笑顔を向けるレオン。


「ミランちゃん。貴方今日あたしに何か相談したくて来たんでしょう?」


驚いた。

こういう時いつもレオンは鋭い。

此方が何を考えているか直ぐに見抜いてしまう。

全く久しぶりだと言うのに驚かせてくれるよレオンは・・。


「ああ、ちょっとね。でも勿論相談のためだけに来たわけじゃないよ。半分以上はレオンに会いたくて来たんだからね?」


「分かってるわよ。ミランちゃんはそういう子だもの。それこそこっちが声を掛けたいくらい困ってる時でも最後まで一人で我慢しているのが貴方だもの・・あたしとしては友達なんだからもっと相談してほしい位よ?」


「ありがとう。レオン。ちょっと楽になったよ。」


「いいえ~」


笑顔で返してくれるレオン。


「それで本題は何なの?」


「それがね・・何といったら良いか」


「んもう。じれったいわねぇ。さっきあたしに聴いてきたってことは取り敢えず将来の話って事で良いの?」


「ああうん・・」


「それで何に成りたいって思ってるの?」


「それがね・・」


「もう。男ならはっきり言いなさい。事の顛末全部言いなさい!!全部よ!!」


「ええ・・分かった・・その先ずはレオンに会えなくなった頃から父上に鍛えられ始めて・・」


それから僕は事の顛末と言うか。

ここ最近までの自分の事を洗いざらい述べた。


「ふうん。そう。結局、自分に才能が無くて別の仕事をしないとと思ってるのね?」


「うん・・」


「そうねぇ・・」


と、レオンは僕のために何やら考えを纏め始めた。




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凡夫なる傑物 ノナガ @nonaga

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