第二章「凡夫と友人」

第13話



突然だが私には友人がいる。

子どもの頃から同じ軍属の父を持つという事で良く遊んでいた。

しかし、実際には男爵家と侯爵家という事もあり年を摂るごとに互いに顔を合わせなくなっていった。

久々に彼に合おうと思い彼の家の舞踏会に参加したのだが・・。


「キャー、レオンハート様ぁ~」


「レオン様ぁ~レオン様ぁ~?」


「ああなんて美しいのでしょうか」


「私レオン様のためなら死ねる!!」


「ああまるで寝物語の王子さまみたい・・」



淑女の方々に囲まれる我が友を見る



「はは、ダンスですか?私で良ければ何時でも踊りましょう。美しいモノには価値がある。宝石よりも美しい花がここには沢山咲き誇っているのだから」


その気障なセリフに周りの淑女はもうクラクラだ。

正に女性の理想の王子さまと言った風体だろう。

子どもの頃から同年代の女の子にモテていたが彼も俺と同じ16歳となり結婚が出来る歳となった。

高身長でイケメン、性格も良く家柄も良い彼は正に引く手数多だろう。

そんな正反対な僕達が友達なのには理由がある。


「ん・・?・・ミラン?ミラン・リヒターか!?」


彼が僕を見つける。

うーむ、タイミングが悪いと言うかなんというか。

彼を見ていた女性陣が何事かと僕を見やる。

その目には明らかな侮蔑が混じっていたが僕は気にしないこととする。


「久しぶりだなミラン。前に会ったのは何時のことだったろうか」


「レオンハート・ラインヘルツ侯爵家次期当主様お久しぶりです」


「そんな他人行儀な言い方は止めてくれ・・君と私は友達だろ・・?」


悲しそうな顔で此方を見てくるレオン。

まあだが此方もいきなり呼び捨ては難しい。

特に周りの女性陣の目が半端じゃなく怖い。

だから一応君の方から友達と念を押してほしかったんだよ。


「それじゃあ、子供の頃と同じように話させて頂くよ。因みに前に合ったのは軍の模擬戦の見学に行った時だよ。あの時は二人で模擬戦を見乍らチェスをしたんだったなぁ」


「そうだ。いや懐かしい。三年前になるかな?」


「ああ、三年も会っていなかったなぁ」


そんな他愛も無い話をしていると周りからざわざわと声が聞こえてくる。


「何アイツ、レオン様の友達?どうせレオン様を利用しようとしているに違いないわ」


「それにあの普通の顔・・隣に立つにふさわしくないわ」


「何なのあの人一体何者なの?」


と自称淑女の声が聞こえてくる。

ダメだよ皆さんもっと淑女なら言葉を選ばないと。

でないと僕泣いちゃうよ?

と割と涙目になりつつある僕を一瞥してレオンは淑女の元へと歩いていく。


「レオン様~」


「こっちでもっとお話をしましょう~」


淑女の方々がレオンを誘う。


「すみません。彼は唯一無二の私の親友です。三年振りという事で積もる話もありますので少々席を外したいと思います」


淑女の皆さんから声が上がる。

名残惜しそうに立ち去ろうとするレオンの腕を掴む女性が一人。

彼女はしな垂れかかるようにレオンを引き留める。


「いいではないですか。レオン様此方で皆とお話を致しましょう?良ければ彼も・・」


レオンは不敵な笑みを浮かべる。

女性を誘惑するような蠱惑的な笑みを浮かべて、しな垂れかかる女性に接吻が出来る程の近さまで顔を近づけてこう言った。


「美しいバラには棘がある。男を誘惑するなら自ら近づく以外にも近づけないという駆け引きも必要だよ。でも僕はバラより子猫が好みかな。だからお利口で待っていてね子猫ちゃん?」


その一言にしな垂れ掛かってきた女性は魔法に掛かったように静かに自分の席へと戻っていった。

何ともまあ凄い男へとなったものだよレオン・・。


「ミラン・・別に部屋があるから其方で話そう。軽く摘まめる料理なども其方に運ばせよう」


「ああ、分かったよ」


そして僕は久々に会ったレオンハート・ラインヘルツと交流を深めることとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る