【44】行ってらっしゃいませ、ご主人様

イローナは結局、俺のことをどう思っているのだろう。

ただの幼馴染み、相棒、何でも言うことを聞く便利屋。想像が付くのはこれぐらいだ。

もし俺が今回の一件で功績を讃えられ、軍隊長にでもなっていたらイローナの俺への態度は変わったのだろうか。

いや、あり得ない。

イローナは元々レン王子に対して真っ直ぐな忠誠心を抱き、レイズ城に仕えるメイドとなったのだ。メイドは王族に対して仕えるもの。兵士とは立場は違えど階級が上がったぐらいで態度を変えることはないだろう。それに兵士にメイドが仕えることはあり得ないのだから。

ただ水晶の願いは正しいかった。


「行ってらっしゃいませ、ご主人様」


俺が自室を出ようとした時、背中越しにイローナは言った。


「ご主人様はやっぱり気持ち悪いな」

「は? あんたが一度ぐらいは言って貰いたいってわがまま言うからでしょ! もう最低」


実はあの事件から一ヶ月ほど経った後、俺たちはクレイスたちに背中を押され婚儀を交わすことになった。レイズ城の近くに家を借り、二人で生活をしている。

俺は相変わらず一等兵として。

そしてイローナは俺のメイド、いや妻として家事や育児に精を尽くしている。

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犯人は生意気なメイド 文目みち @jumonji

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