いつもの喫茶店

「負けちゃいましたあ……」



「はは、良い所まで言ったろ。レベル差もあるしな」



いつも通りのヘナヘナとした声で、カオリはテーブルに項垂れた。

木製のテーブルが悲鳴をあげているのが分かる。





……元の場所に転送された後、俺達は久しぶりにいつもの喫茶店に移動している。



人があまりいないこの場所は、俺達のお気に入りになっていた。





「いやいや、結局の所私のHPはゼロ、漆黒さんは殆ど残ってるじゃないですか!」





残念そうな顔をするカオリの肩を叩く。





「そんな事言うんじゃねえよ、はっきりと分かったから。お前の強さは」





途中からカオリのテンションは意味不明になっていたが……



それは一旦置いておいて、正直、ビビったよね。突如として動けなくなったあの技、追い込まんだ後の狂暴化状態……あの雰囲気に飲まれていたら、俺は恐らくあのまま死んでいたかもしれない。



狂戦士という職業と、カオリの相性はかなり素晴らしいみたいだ。





「……へへ、伊達にこのゲームをやっていませんから」



「おいおい、確か朝だけじゃなかったか?」



「……」



「……ん?」



「ソ、ソウデスネ」



まさかコイツ……





「正直に言っていい。一日最大何時間やった?」



「……は、八時間程……」



「はあ!?一日のプレイ時間の限界までやってんじゃねーか!」



「……だ、大丈夫です!リアルには全く支障ありません!」



「そ、そうっすか……」





別にまあ人の事だから口出しはしないけどさ……



「体調には気をつけろよ、カオリ」


「……!はあい……」



俺は父親かっての。

まあ過去の自分にも同じ事を言われていた様な気もするが。



「……俺が言えた事じゃねえけどな」



「え?」



「何でもない。んじゃ久々に狩りでもするか?」



「!!はいはーい!」



両手を上げて、嬉しそうな声を上げるカオリ。重そうな鎧が軽そうに見える。頭がおかしくなりそうだ。



まあ、でも。



……やっぱりフレンドっていいもんですね。

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