狂戦士③

「……狂暴化!!」



開けたカオリの目は赤く光り、オーラは尚一層強く身体を包んでいる。

斧の色は鈍い銀から血のような紅色へ。

殺気を具現化したかのような、その見た目。



「こっわ……」



正直引くレベルの恐ろしさ。

子供が見たら間違いなくトラウマになる。一応このゲームR-15なんだけどさ……



「これが、カオリの最終手段か」


「……はい。行きますよ」



瞬間、カオリが向かう。




「――っ!」



立ち向かおうとした俺の身体に自分で驚く。

身体が、恐れているのだ。あの化け物に。


呼吸が荒れ、身体は凍った様に鈍い。普段通りの動きが出来ない。



「『威圧』か――っ!」



今のアイツは、存在するだけで周りの敵全ての動きを鈍らせるだろう。

恐らく今の状態に――かなりのバフが掛かっている。



「――!」



対処の方法を思いつく前に、それは『目の前』に居た。



「っぶねえ!!」



大振りな攻撃のはずなのに、身体が強張って余裕で避けられなかった。

たまらず俺は距離を取る。



「……当たれば『即死』だな」


「どうでしょうね」



地面に残る跡を見て嘆く俺に、カオリは笑って言う。

そして、地面を蹴った。



「――――!」



また、次が来る。


どうする?こんな調子じゃいつか当たるぞ?

掌に人でも書いて飲むか?……そんな暇無いか。


……今のカオリには、かなりの『バフ』が掛かっている。

なら――それ相応の、『デバフ』もかかっているはずだ。




試してみよう。



「――よっと!」



ポケットからナイフを投擲。



「!……こんなもの、効かないですよ!」



ナイフは、カオリの斧によって叩き落とされた。

様子見だった為、そこまで本気で投げてはいない。


だが――見えてしまった。



「はは。……そっか」



俺は、もう一度ナイフを。



「……!」



向かってくるカオリの目。


その目は――確かに、『恐れて』いた。

余裕で避けられるそれを、大振りな攻撃で振り落としている……そして、もう一つ。


カオリのHPは一割を切っている。

答えは……もう出た。



「下がってんな。敏捷……器用もか?それとも何かの制約か――」


「――!」



俺の独り言を掻き消すように、首を刈り取る一振りが襲う。


だが――焦る事はない。


もう、俺の『恐怖』は消えていた。



「……くっ!」



回避。


隙だらけのカオリの身体に、俺はナイフを突き立てる。



「……あはは、やっぱり敵いませんね――」




≪決闘を終了します≫

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