かわいい月桂冠ちゃん

🌸梅が咲いたよ！ 桜はまだかなあ

　結局、越乃寒梅くんは全てのお花見の約束を取り付けた。

　苦笑混じりに黄桜ちゃんが梅が好きだと言い、月桂冠ちゃんは菜の花が見たいと言った。それから獺祭（だっちゃん）に向かって、桜好きだよね？　ねっ？　と迫り、首を縦に振らせた。

「ちょっと寒いけど、いい匂いだねー」

　黄桜ちゃんが真っ青に晴れ渡る空に向かって伸びをする。森伊蔵さんたちはその足元にレジャーシートを広げ、山盛りのおむすびの入ったバスケットを開けて熱い番茶を煎れる。

　春と呼ぶにはまだ寒いけれど、柔らかな陽の注ぐステキな一日だ。みんなで車座になっておむすびを囲む。

　相も変わらず、越乃寒梅くんは座る順の主張が激しい。もちろん魔王さんである。譲らない。

　越乃寒梅くんの隣に魔王さん。その隣に宇佐美どの。お膝の上にだっちゃん。

　聞いて！

　遂に！　

　森伊蔵さんの隣に月桂冠ちゃんが！！

　なんてなんて素晴らしいことでしょう。

　森伊蔵さんは幸せいっぱいにおむすびを頬張った。

「……？！？！？！」

　涙目になった森伊蔵さんが越乃寒梅くんを睨む。

　こんなことをするのは越乃寒梅くん以外に考えられないからだ。

「あ。伊蔵さん、当たり？　やったね！！」

　果たして越乃寒梅くんは、悪びれることもなく手を叩く。

「おー、わさびかぁ。あ。あとね、カラシとハバネロもあるから楽しみにしててね♪」

「「「「「バカなの！？」」」」」

　澄み渡る陽気のなかに、みんなの悲鳴が溶けてゆく。

　まあ、おむすびロシアンルーレットは意外に盛り上がり、わいわい楽しいお花見となりまして。爽やかな梅の香のなかに賑やかな笑い声が響いたのでした。

　あ。因みに。

　カラシは越乃寒梅くんが引きました。

　ハバネロ？　ハバネロは。

　森伊蔵さん。

　さすが、主役の貫禄です。持ってる！　笑。