寝取られ訴え

ええ存じております。 知っておりますとも。 


 それでも私には理解は出来ても納得することは出来ないのです。


 あいつはひどいのです。 ひどい女なのです。


 相手も非道ではありますが、それ以上にあの女が許せません。


 私がアレと出会いましたのは学生のときでありました。  


 告白は私からしたのです。 一世一代の決断でありました。 


 日々、無難に生きてきた私の唯一の冒険でありました。


 断られていたのなら自殺していたかもしれません、それでもそれを止められないくらいに想いは熱くたぎっていたのです。

 

 数年も付き合っておりました。 もちろん最後までしました。


 潤んだ瞳で愛してるといわれた時には結婚しようとさえ思っておりました。


 貴方様が見ての通り、私は貧弱です。 メガネです。 度胸もありません。 


 有り体にいえば評価されたときに「良い人なんだけどね…」と言われるような人間であります。


 ですがこれはひどいです。 許されるはずのない所業なのです。


 私は幾日も寝ておりません。 ろくに食べることも出来ません。 


 それがますます私を惨めにするのです。 


 あのとき…ええ、あのときに信じて都会の大学に送り出さなければと後悔ばかりしております。


 私とアレが愛をささやきあったのは入学してからほんの一週間だけでありました。


 サークルの先輩がしつこいなんて愚痴を聞かされながらも慰めつづけ、やがてゼミの合宿に行くと聞かされたました。

 

 私は何も言いませんでした。 言えませんでした。


 期待と不安を胸にしまい、気をつけてねとだけ言っただけなのです。 

 

 それからすぐに連絡が取れなくなりました。 


 メールも既読になりません。


 ふとある日、アレから届いたのです。 


 それは白い封筒で丁寧に糊付けをされた一枚のDVDでありました。 


 最初、私は期待しておりました。


 なぜって?アレの名前で投函されておりましたし、DVD自体には『絶対、見てねハート』などと書かれておりましたから。


 おそらくは送り出した先での近況や友人達の紹介でもしてくれるなどと思っておりましたから。


 それなのに…。 ああ、それなのに…。  


 何ということでしょう。


 なんという有様なのでしょう。


 そこには獣が二体が映っておりました。 


 アレは獣となりました。 成り果てておりました。 


 いいえ、ひょっとすると私が獣でアレが人間であったのかもしれません。


 聞いたことの無い声でありました。


 見たことも無い表情でありました。


 そして感じたことの無い喜びでありました。


 アレが私の知らない名前を叫び、大好きー! と叫び、アヘアヘとした表情を見るたびに全身を滅多打ちにされたような気になるのです。


 アレが私の名前を出すときには決まって比較するのです。 


 私よりも相手の方が良いと、


 私よりも相手のほうがすごいと。


 私よりも相手のモノが気持ちよいと。


 最近では画面の前の私に向かって声をかけてきます。


 『ゴメンね…だってあなたよりも○○君の方が…』


 そう言って一つ一つ解説しながら私を馬鹿にするのです。 そして最後には言葉すら失ってアヘ顔だけを画面にさらし続けます。


 ああ、私はおかしくなってしまったのでしょうか? 


 不快で不愉快で悲しくてしょうがないのです。 


 それでも私は見ることを止められないのです。 裏切り、屈辱、そして劣等感、すべてがない交ぜになっております。


 ええ、正直にお話しましょう、ですが同時にまたひどく興奮を覚えてしまうのです。 


 そうですとも、理解は出来ないでしょう、当然ですとも私ですら理解が出来ないのですからあなた様にはとうていそうでございましょう。

 

 いえいえ馬鹿にしておるわけではありません。 馬鹿なのは私なのですから。


 ええ、信じておりました。 疑いもしませんでした。


 想像すらしていませんでした自分の愚かさを実感しております。


 心臓は早く、苦しく騒いでおります。 涙はとうに枯れはてております。 夜も眠れません。


 人間としての…いいえオスとしての矜持など崩れ果てて、私はただの負け犬であります。 


 今すぐにでも怒鳴りつけたい殴ってやりたい


 いっそ死んでしまおうか?


 それすら考えるほどの悲しみを抱きながらムスコを強く、強く握り締めるだけでございます。


 そうなのです。 ええ、そうなのです。 


 なんとも情けないことにムスコ、ムスコはただいきりたって収まらないのです。


 もはやそれを見なければ勃ちあがることすら出来ないのです。


 そして今日もまたDVDが送られてきました。


 どうか共に見ませんか? 見てくれませんか?


 いいえ、何も企んではおりません。 料金などもってのほかでございます。


 ただ。ただ見て頂きたい。 


 それだけでございます。


 どうか愛した女が獣となって私を見下す様を。


 きっとあなたも気に入ると思いますから。


 なぜですって? 


 だって…ねえ? 


 あなたのそのお顔、私と同じ表情をしていらっしゃいますから。


 

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さて、アヘについて語ろうじゃないか。 中田祐三 @syousetugaki123456

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