人生ゲーム

春風月葉

人生ゲーム

 私という人間の存在価値は、母の人生ゲームと言っても過言ではなかった。

 幼い頃から母の決めたレールの上を歩き続け、そのことに何も疑問など持たなかった。

 父が母に愛想を尽き私達を捨てた時、父は私にこう言った、

「お前はそれで良いのか?」と、私の人生は、おそらくそこで壊れてしまったのだろう。

 私はそれまで、母で固められた木偶人形だったのに、その一言で考えてしまったのだ。

 私とは何か?を…。

 一度考え始めればきりがなかった。

 服装も、口調も、進路も、将来も、なにもかも、そしてそれは夢までも…。

 私は探したのだ、私とは何かを。

 しかし見つからない。

 当たり前だ、今までの人生は私の人生でなく、母の人形遊びだったのだから。

 それからだろうか…、私は母のレールを拒み、自分の道を歩き始めた。

 その道はまだ到底道とは言えないほどに障害だらけだけれど、私はこの道を歩きたいと思う。

 この道だけが、私の人生となるのだから。

 道がないのならば自分の知恵でその先に道を切り開く、いいじゃないか。

 私の人生もまた、小さく長い一つの冒険なのだから。

 命を吹き込まれた木偶人形は、今日も一人の人としての人生を送っている。

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人生ゲーム 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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