MSNメッセンジャーとわたし
前回の思い出話で筆者の印象がどうなったのか内心ドキドキしているのだが、まだまだ書くネタがあるので思い出すだけ書き綴ってみる。
この文章をお読みになっている方はMSNメッセンジャーというツールをご存知だろうか。
MS社が開発したインスタントメッセンジャーツールなのだが、中学生の頃私はこのツールに大変お世話になっていた。
(私が触っていた時期は既にWindow Live メッセンジャーへとアップデートしているのだが、当時のインターネットユーザーは揃ってMSNメッセンジャーと呼んでいたのでここではそのままMSNメッセンジャーと呼ぶ。)
このツールを頻繁に触るようになったのは、ガンホーが運営しているオンラインゲームであるラグナロクオンラインでの友人との交流がきっかけだった。
始めるきっかけとなった細かいエピソードは覚えていないが、「これがあったら便利だから」といった感じの流れで細かい使い方をよく知らずに始めたことを覚えている。
このツールを使うことで、ゲーム外でも気軽な交流が可能になった。ゲームにログアウト時でもダンジョン攻略の誘いをすることができたり、動画や攻略情報のURLを容易に送り合うことができたのだ。
当時だと、IRCやSkypeもよく使われていたはずだが、私の周囲のコミュニティではMSNメッセンジャーがやはり一番使われていたと思う。現在だと、LINEやSlack、Discordが同じ役目としてよく使われている気がする。
使い方としては、交流したい人間から登録メールアドレスを教えてもらい、こちらでメールアドレスを登録してしまえば友達リストに追加することができ、ログイン時にチャットを飛ばし合いコミュニケーションを取り合うことができる、と言ったものだった覚えがある。
状況に合わせて、作業中、退席中や擬似オフライン(本当はオンラインだけどオフラインの振りをすること)などユーザーのオンライン設定を変える機能もあったと思う。
SlackやDiscordでも使えるようなプロフィール情報系の機能はこの頃からそこそこ揃っていたと思う。
例えば、ユーザーネームの横に近況コメントや今聞いている音楽の情報を載せることもできて楽しかった覚えがある。
そんなツールの使い方の思い出話はさておき、私はこのツールが本当に大好きだった。
意外にも私は今までネットゲーム以外で一個人とチャットツールを使って会話する経験はなかったのだ。
ゲーム内でもwis(ささやき)やチャットルームを立てるなどのツールを通してチャットをすることはできても、機能的に不便なところもあり、MSNメッセンジャーと出会った時は色々と衝撃だった。
ゲーム内の活動を終えてログアウトしても、MSNメッセンジャーを使えばいつでもゲームの友人たちと会話でき、趣味の話やゲームの話ができるのだ。
ゲームではあまり聞けないような込み入った現実での話を多少聞くこともあった。
このような話を聞くたび、パソコンの向こうのチャット相手は皆それぞれの現実での人生を送っている生身の人間であることを思い知らされた。
そんな話を聞くのが楽しくて気づいたら朝の3,4時になっていることが何度もあった。
そういった話を聞けば聞くほど、「世の中にはこんなに色んな経歴の人がたくさんいるんだなあ、面白いなあ、もっと知ってみたいなあ」と好奇心を募らせるようになり、気付けばインターネットの人間と交流をすることが大好きな女子中学生になっていた。
今思えば、多少リスキーなことだったかもしれないし、親は薄々と状況を察して心配していたと思う。また、同級生からも「そんなの危ない、変だよ」と怒る人はいた記憶がある。
逆に、Amebaピグなどでインターネットの人間との交流に慣れていた同級生は「うんうん、わかる。面白いよね〜」と寛容的だった。
今とはまた違ったインターネットに対する価値観が個々の中学生に広がっていたと思う。
そんな批判と許容の狭間の中でも、MSNメッセンジャーのチャット窓からニコニコ動画のURLやネット漫画やネット小説のURLを送りつけて、「世の中には面白いものがたくさんあるんだぜ」と教えてくれた友人がいたからこそ、好きなコンテンツがたくさん増えて、インターネットを更に好きになることができた。
ゲームをやめた後も、MSNメッセンジャーがあったおかげで交流を続けることができた友人が何人もいた。
ただ、そんなMSNメッセンジャーも2013年にSkypeと統合され終わりを迎えた。
当時頻繁にログインしていた友人のほとんどもその統合により、ログアウトしたままになりぱったりと連絡が取れなくなってしまった。頑張ってTwitterを探したら再会できるかもだけど、いかんせん情報が古くて難しいだろうなあと思う。
でもラグナロクオンラインを通してMSNメッセンジャーを使い始めたことで得られたものは沢山あったし、大人になった今でも人格形成に大きな影響を残したチャットツールだったと思う。
今でもDiscordやSlackのおかげでゲームを通じたネットコミュニケーションに困るといったことはないだろう。
でも、個人ユーザーから突然メッセージが飛んできた時のMSNメッセンジャーでしか聞くことができない「ピコ」という通知音が聞こえた際のワクワク感は、あのツールでしか味わえない気がしてしまう。
あの通知音がいきなり聞こえてきたら今でも心臓がドキッとしてしまうだろう。
他の人だったらそれはSkypeで味わった体験かもしれないし、今だったらLINEかもしれない。
といった風に、人には皆それぞれ耳にすると胸の高鳴りを感じてしまう「チャット通知音」が脳に刻まれて続けていると私は思い続けている。
制服とインターネット 桐生あんず @kiryuanzu
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