制服とインターネット
桐生あんず
監視する女子高生
2010年代前半、TwitterやMixi、Amebaブログ全盛期当時の女子高生たちは何をしていただろうか。
当時の彼女たちは「インターネットストーカーの卵」だった。
私が同じグループに所属していた女子高生は所謂1軍には入らない2軍、所謂2.5軍女子が多かったと思う。私と私の親友は3軍、もしくはギリギリアウトカーストだとも思われた。
2012年ごろ、女子高生たちは中学時代からずっと使っていただろう携帯電話を投げ捨てスマートフォンという文明の利器に触れるようになった。そこから誕生したのは、「インターネット監視社会」である。
もうぼんやりとしか覚えていないけれど、私の周りの女子高生コミュニティによって形成されたインターネットには確かに「監視社会」が存在していた。
私たちが所属していたグループ女子たちは、Twitterを趣味に関するつぶやきや学校では言えないような話をするための所謂「オタ垢」「ネット垢」をメインに運用する方法を取っていた。
鍵垢にしたり、リアルとはかけ離れたHN(ハンドルネーム)を利用することで彼女たちは極力、ネットとリアルが密接になることを防いでいたと思われる。
対して、1軍女子たちのTwitterの使い方は本名やあだ名をユーザー名として表示し、自撮りや運動会での写真をバンバンとインターネットの海へと放出する「リア垢」といったものを運用していた。
その1軍女子たちは、残念ながらその写真が不特定多数に見られるという発想を持つまでのリテラシー力はその際、持っていなかった。
それを逆手にとり、インターネットを使いこなす2軍女子は、彼女たちのアカウントを非公開リストで監視を行い、グループLINEや裏垢コミュニティで「◯◯ちゃんたちまたスタバなうしてるwウケるw」「この子たち本当は裏で男奪い合ってたのによくあんなことできるよねー」とウオッチャー丸出しの感想を共有し合い、鬼女板ばりの品評が飛び交う文化が発生していた。
当時の私からすると、普段から深く交流することのないような他人に興味を持って彼らのプライベートを品評し合う感情があまり共感できなかったが、適当にTwitter検索して仕入れたクラスメイトたちのネタになりそうなツイートを裏垢コミュニティの方で放流すると、同じ裏垢コミュニティの友人たちからいいねがいっぱいついて反応してもらえると言ったコミュニケーションが発生し繋がり欲求を満たす手段になっていたため、一緒になって遊んでいた。
今思うと、なんとも言い難い世界である。
もっと健全にコミュニケーション欲求を満たす方法はなかったのだろうか。
これは私の周囲であった話だが、もしかしたら2011~2014年代の全国の女子高生たちも同じような文化を発生させていたのではないかとふと懸想してしまう。
なお、「スタバなう」をあざ笑っていた2軍女子たちも数年後に大学生になる頃には鍵付きリア垢やインスタで店員からのメッセージ付きのドリンクとSNOWで加工された自撮りをアップロードするように成長を遂げるといった観測結果が存在する。
みな、結局はキラキラとしたインターネットに集約されていったのだ。
そして、2018年は今も続いている。
このシリーズは、私の周りにおける主に中高時代の「ネットコミュニケーション」的エピソードを綴っていくエッセーである。怒られそうだなと思ったらフェイクが入ります。
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