この話を拝見した時、私の脳裏に浮かんだのは北欧のような深く濃い森の風景でした。うっすらと霧がかった景色が、次第に濃いミルクのような視界に変わっていく…まるで夢のような光景を進んでいくと、目の前に広がる古代の遺跡が広がります。「私」がそこで出会うのは幻想のような存在でした。話のどのシーンを切り取っても、まるで一枚の絵画のようになる話です。焦がれ、手の届かない存在だと分かっていながらも求めてしまう切なさ。そんな気持ちを一度でも感じたことのある方におすすめします。
情景描写が多いのに、こんなに主人公の気持ちが伝わるのはすごいと思います。
情景描写の表現が素晴らしかったです。森に立ち込める霧の湿度まで感じられるようでした。主人公の性別や素性がはっきりと明かされないまま進むのに、この話が恋のお話であることが深く伝わってきます。最後の女性の言葉にはとても切ない気持ちになりました。
霧が最も濃くなる時期、危険を冒してまで彼がその遺跡へ向かうのは彼女に会うため……。ほんの一瞬の逢瀬のため、その場所へ訪れる彼の純粋な恋心がとても美しいです。霧の中の遺跡、その台座、深い森の神秘的な情景を思い浮かべるとうっとりとした気分になります。素敵な作品を読ませてくださり、ありがとうございました!