犯罪者ちびまるフォイを取り締まるフォイ

ちびまるフォイ

さぁーみんな集まって!捕まるフォイの時間だよ

「くりかえしお伝えします。

 今朝8時、カクヨム群なろう区αポリス町内にて発生した

 殺人事件はちびまるフォイ氏を容疑者として確保しました。


 なお、容疑者は

 『離せ! この穢れた血め!』など意味不明な供述を続けており

 カクヨム警察では責任能力の有無も視野に捜査を続ける方針です」



テレビを消すと、カクヨム署内では事件の捜査会議が再開された。


「それで、容疑者はどうなんだ?」


「はい、こちらの調べによりますと容疑者は

 毎日決まった時間に投稿を繰り返したようです」


「なるほど、そういうことか」

「というと?」


「毎日決まった時間に投稿することで、アリバイ工作をしたんだ。

 この犯人、責任能力ありまくりで前から計画していたに違いない」


他の捜査官が立ち上がる。


「さらに、犯人の投稿のおよそ99%はバッドエンドという調べがあります」


「ふむ、なるほど。世の中のうっぷんや破滅願望を

 バッドエンドという形で発散していたに違いない。危険な奴だ」


次の捜査官が逆立ちする。


「こちらの調べでは、犯人の投稿には殺人や死亡系が多かったです。

 それも、あっさりと死んだ描写が多いです」


「なんて奴だ。人が死ぬことに対してのハードルが低いんだな。

 連続殺人鬼などに見られる傾向だ。

 捜査官A、こいつの詳しい動きを調査するんだ」


「はい!」


捜査官Aは会議室を荒々しく飛び出して聞き込み調査へと向かった。

入れ違いにひげのはやした初老の男が入ってきた。


「あ、署長! 到着されました!」

「この方は?」


「犯罪心理学に詳しい大学の教授です」


「それは頼もしい。今回の犯人の分析をお願いできますか?」

「よかろう」


教授はプリントされた容疑者の文章をつらつらと読み始めた。


「教授、どうですか? なにかわかりましたか?」


「ええ、大きな特徴を1つ見つけましたぞ。あなたも読んでみなさい」


勧められて署長も文章に目を通したが、すでに読んでいるのもあって

とくにコメントが思いつかなかった。


「私にはよくわかりません、どういった特徴があるでしょう」


「感情じゃよ」

「感情?」


署長は再度読み直し、はっと気づかされた。


「教授の言う通りだ! この文章には感情描写がほとんどない!」


「そう、読者に共感させたりする要素がほとんどないのじゃ。

 これはソシオパスに見られる共感力の欠如に他ならない」


「ソシオパス……?」


「反社会的な人間をサイコパスというじゃろう。あれは生まれつき。

 それに対して、ソシオパスは後天的。環境によって悪に堕ちた人間じゃ。

 善悪の概念があるぶん、サイコパスより攻撃性は低いはずじゃが……」


「そんな危険人物だったとは……。すぐにこの分析をレポートにします」


署長は部下に命じて容疑者の危険性を資料にまとめた。

その途中、部屋にぞろぞろと年齢バラバラの一般人が入ってきた。


「おい! 誰だこの会議室に一般人を入れたのは!

 今は大事な会議中だぞ!」


「署長、私が呼んだんです。この人たちは犯人のフォロワーです」

「フォロワー?」


「犯人の投稿を当日まで読んでいた方です。

 なにか有意義な意見が聞けるかもしれません」


「よしわかった。プライバシー保護のためにモザイクと声の加工を忘れずにな」


署長はひとりひとり丁寧に意見を聞いていった。


『そうですねぇ、あんまり応援コメントに返信はなかったです。

 一方通行っていう感じでした』


「教授、これは?」


「他社への協調性が低い人間の特徴じゃ。

 社会になじめない人間は、相手に返礼する性質を持ちにくいんじゃ」




『ああ、そういえば自主企画や運営企画にも参加してなかったです。

 ただ機械的に投稿しているって感じでしたよ』


「教授、どういったことでしょう」


「自己否定からの逃避じゃな。

 自分が否定される場所を避けて常に自分の範疇だけで済まそうとする。

 自分の考えが間違っていないと固執する危険な思考じゃ」




『レビューを送ったこと? いや、見たことないですねぇ。

 僕、結構コメント残してるのに、レビューされたこと1度もないですね』


「教授」


「異常なプライドと自己愛……ナルシストじゃ。

 自分だけが優れていると思い込む犯罪思考の持ち主じゃよ」


フォロワーからの聞き込みとレポートの作成が終わると

署長は全警察に向けて宣言した。


「よし、これよりちびまるフォイを逮捕し、死刑とする!!」


「「「 了解!! 」」


全員が敬礼したとき、捜査官Aが息を切らせて捜査本部に戻ってきた。


「はぁっ、はぁっ……大変です……!」


「捜査官A、すまない。無駄足だったな。

 優秀な我が部下たちが十分すぎる証人を集めてくれたんだ。

 わざわざ再調査する必要はなかったんだ」


「そうじゃないんです!」


捜査官Aは自分の調査結果を全員に見せた。



「容疑者は、犯行当日に地球の裏側でリオの執筆パーティに生放送で参加していました!

 さらに、重度の潔癖症で凶器に使われた他人の握ったおにぎりもつかめません!

 それに、血に対する嫌悪症があり、被害者の出血を見たら失神します!!」



警察官全員が凍り付いた。

そして、署長が次なる命令をくだした。


「よし、わかった」





「では、地球の裏側にいながら潔癖症を乗り越えて

 血を見ないで、被疑者を殺せる方法を全員で探すんだ!! 証拠はきっとある!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

犯罪者ちびまるフォイを取り締まるフォイ ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ