野樂一華

糞尿の臭いが満ちた路地裏
裸電球のインチキな光が嘔吐物に塗れた道を照らす
ずうっと、少女は独り、あるいていく
肩に下げた鞄には、養父が買ってくれた草臥れた画材
腕に抱えるは、ばらばら惨劇の残酷画
目指す場所は見世物小屋、屑人間の集会所
「お願い、わたしを雇ってくださいませんか」


＊＊＊


　残酷画絵師を名乗る少女「百合乃」は、見世物小屋「野樂一華」の専属絵師となる為に薄暗い路地裏を独り歩いていた。行き倒れの老人を救った彼女は、老人から忠告を受ける。
　老人が言うことには、「野樂一華」に足を踏み入れた者は皆気を狂わせ、その惨劇を崇拝するらしい。殊に若い女は――十三、四歳の少女はその身体も心も、看板娘「一華」に捧げる程だと言う。
　忠告をものともせず見世物小屋の扉を開いた百合乃を迎えたのは…続きを読む