日大選手のタックルは日本のメディアほど悪質なのか

ネコ エレクトゥス

第1話

 年間にNFLのゲームを何十試合も見る生活を二十年以上続けてきて、今後も続けるフットボール・ジャンキーの話として読んでもらいたい。


 まず最初にあのタックルはどんなレベルから見てもイリーガルであるということ。それは変わらない。だが実は本家のNFLでもたった三年ほど前に同じような事例があったのだ。アトランタ・ファルコンズのコーチや選手たちが、最初に相手の選手を負傷退場させた選手を祝福するというようなことをやったらしい(メディアならその位予習しとけ)。もちろんチームもコーチも処分された。この例から分かるように問題は日本のメディアが取り上げているような日本の古い暴力体質うんぬんとかではなく、フットボールという競技そのものに内在していると言っていい。では何故フットボールなるスポーツがそういう方向に向かうのか?


 それを理解するには日本大学が問題になっている内田監督のもとで学生チャンピオンになったという事実から始めなければならない。

 もし身体能力及び戦術の理解度といった基本能力が全く同じ二つのチームがあった場合、「正常な」指導を受けたチームと内田監督の指導を受けたチームはどっちが勝つか。十のうち八、九回は内田監督の指導を受けたチームが勝つ、それがフットボールというスポーツなんだということ。さらに進めて考えるなら能力的に劣っている選手やチームはより厳しくタックルしに行かなけらばならない、これはフットボールを理解する人間にとっては常識なんだということ、これをどうか知ってほしい。それが一線を越えることがあるのは本家アメリカでもナーヴァスな問題になっているが、積極性が殺がれるという意見も当然存在している。

 学生スポーツが勝利至上主義に傾くのは問題があるが、それは今日本のメディアが問題にしていることではない(本来ならそれを問題にすべきなのだが)。それでも誰もが試合をやるからには勝ちたいし、勝てる監督に忠誠を誓うってのは当然あることだと思う(そうでしょ?)。

 とにかく内田監督が勝利に導ける監督であること、その中で脱落していく選手がいるのも理解を超える範囲ではないということ、行き過ぎた指導は間違ってるにしても、一方で内田監督を支持する関係者がいるのも分からない訳ではないということ、それを理解してほしい。


 それともう一つ、実はこの悪質タックル問題が公になってすぐ、サンケイスポーツに面白い記事が載っていて、妙に納得してしまったのだけど、その話は闇に葬り去られてしまったのでもう一度蒸し返してみようと思う。

 日本大学と関西学院大学が前回対戦した時、日大の中心選手であるクォーター・バックが脳震盪でノックアウトされたということがあったらしい。今回の出来事はそれが伏線になっているのではないか、とその記事に書かれていて、それが僕を納得させてしまった理由なのだが、もしそれが本当なら試合を行う上で望ましくはないがそういう側面も起こりうるというのもまたアメリカン・フットボールなんだ、ということを知ってほしい。味方は絶対に守らなければならない。これはフットボールの鉄則。それにあの出来事の前にそんなことがあったんだということを知ってみると、今回の出来事の見方がまた違ってくると思う。


 それにしてもフットボールは本当に面白いスポーツで、野球を抜いて全米ナンバーワンになっているのも理由のないことではないんだ、それだけ面白いんだってことを知ってほしい。僕の大好きなフットボールがネガティブな印象で埋め尽くされてしまうのは最悪だし、選手たちにもこれから続けてほしい。そのためにも日本のメディアは動画のイメージや、日大体制の持っている陰性の性質だけを強調した偏った報道は避けてほしい。

 それにしても日本のメディアは悪者を見つけてそれを叩き潰して読者や視聴率を勝ち取る以外できることはないのか。レベルとしては「白人いい人、インディアン悪い人」の西部劇と全く同じなのだが。

                  ~フットボールを死ぬほど愛する人たちへ


 





 

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