私とお母さんの初めてのクリスマス

今日はクリスマス。

誕生日にはいつもお父さんがケーキを持って帰ってきてくれる。


♪~♫~~♪


軽快なメロディーがリビングの窓際から流れる。

お母さんの携帯だ。


「お母さん、携帯鳴ってるよ。」


「あ、ありがとう。ユズちゃん。」


お母さんはソファーで横になっていた。

最近、お母さんの様子がいつもと違うように感じた。

ご飯を作るのもお風呂に入るのも休みながらだったし一緒に食事をしなくなった。

横になっている時間が長く、前はもっと遊んでくれたのにと思うとお母さんと過ごす日は少しつまらなかった。

重そうに身体を起こして私から携帯を受け取る。


「うん・・・はい。分かったわ。気をつけてね。」


少ない言葉数で電話は終了した。

何となくお父さんからだと思った。


「ユズ、買い物行こうか。今日はユズの好きな物たくさん食べようね。」


「やったー!」


私は大好きなオムライス、グラタン、唐揚げ、それからアップルパイをリクエスト。

買い物に行くと、そこにはいつもと違う光景が広がる。

スーパーの中ではクリスマスソングが流れていてキラキラと装飾されていた。

お菓子コーナーの近くをお母さんと歩いているとクリスマス仕様でラッピングされているのが目に入る。


「すっっごーい!ユズも欲しいなぁ。」


お菓子は沢山の種類があり、私の好きなキャラクターでラッピングされているのに

私は夢中になっていた。

これ可愛いなぁ。

お菓子は何が入っているんだろう。

ユズの好きなチョコも入ってるし、ラムネも入ってるし。

いいなぁー。

どれくらい経ったのだろう。

私はお菓子を眺めるのに夢中だったから何も考えられなかった。

全てのお菓子を見尽くして飽きた時やっとお母さんとはぐれた事に気がついた。

歩きまわってれば会えるかな。

どうしよう。

お母さんいないと帰れないよ。

不安になって、とうとう私は涙が少し出てきてしまった。

そんなに広いスーパーではないのだが、久しぶりに来る場所に興奮したことを後悔しはじめた。

なんでいつもこうなるんだろう。

ゆっくりと歩いてスーパーを回ると買い物にきていた人に声をかけらてた。

黒いロングの髪の毛をきれいに束ねていた高校生くらいのお姉ちゃんだった。


「もしかして、迷子?」


「うん。」


「誰と来ていたの?」


「お母さん。」


「そっか。大丈夫だよ。」


お姉さんは優しかった。

ニコっと笑ってくれた事に私は安心して涙が止まらなくなった。


その後、お姉ちゃんは店員さんに事情を話して私は店員さんに引き渡された。


「お名前は?」


店員さんに聞かれた。


「ユズ。」


「あれ、もしかしてハナさん所の孫じゃないかい?」


「そう!ユズのおばあちゃん!」


お母さんが最近は買い物に来るが、前まではおばあちゃんがよく来ていた。

だから店員さんとおばあちゃんは顔見知り。

私の名前を出してよく話をしていたらしい。

だから店員さんは分かったそう。

それから買い物をしていたカートを押しながら

私のいる事務所までお母さんが迎えに来た。


「ユズちゃん、良かったー。」


「ごめんなさい。」


そう言ってお母さんと手を握ろうとしたとき店員さんが言った。


「あなた、ハナさんの所のお嫁さん?ユズちゃん可愛そうね。こんなお母さんで。」


私は意味が分からなかった。

可愛そう?私が?何で?


「普通、自分の子供を連れて来る時は目を離さないわよ。

継母だし、所詮そんなものなのね。可哀想に。」


「・・・ご迷惑をおかけしました。」


お母さんは頭を下げそれだけを言うと私の手を引っ張った。

お母さんとそのまま外に出たら雪が降ってきた。

初雪だ。


「わぁー、すごいね。雪見たの久しぶり。」


私は降ってきた雪に興奮した。


「・・・そうね。」


雪が降る空を見上げたお母さんを見ると目が少し赤くなっていた。


ユズのせいだ。

ユズがいなくなったからだ。

お母さんきっと店員さんに怒られたんだ。


「買い物、別のお店に行こうか。」


「・・・いいよ。お家帰ろ。」


「え?」


「今日はやっぱり目玉焼きが食べたくなったの。

だからお家帰ろうよ、お母さん。」


「ユズちゃん、ありがとう。」


お家に帰ってお母さんは冷蔵庫を開けた。


「よし!オムライスは難しいけどグラタンは作れそうね。」


お母さんが作ったグラタンと目玉焼きとコンスープ

それから、おじいちゃんとおばあちゃんが買いに行ってくれたチキンが食卓に並んだ。


「あれ?お父さんは?」


美味しそうなご飯が目の前にありすっかり忘れていたお父さんを思い出した。


「そろそろかな。」


お母さんがそういうと玄関が開く音がした。


「ユズ、ただいま。」


大きな箱を抱えて帰ってきたお父さんに私は抱きついた。

箱の中身は私が大好きなチョコレートケーキ。

今晩は美味しいご飯とケーキ。

家族で迎えられたクリスマスに満足していつの間にか寝てた。

朝起きると枕元にはサンタさんからのプレゼントとメッセージ。


「ユズちゃんへ。

お母さんを守ったんだね。偉かったね。

そんないい子にはサンタさんからのプレゼントだよ。

Merry Christmas」


プレゼントの中身はユズの好きなキャラクターセットのおもちゃだった。

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