夜空に浮かぶ太陽

@H1N4K0

私の家族

私が1歳の誕生日を迎える日。

両親が離婚した。

母が帰って来なくなった理由は知らない。

私を置いていったんだということは何となくわかった。

顔も声も一度も聞いたことがなかった。

だけど別に寂しくなかった。

私には家族がいたから。

私のお父さんは、無口な人だった。

何を考えているか時々わからない時もあった。

仕事ばかりで休みの日もパソコンに向かっている時間が長かった。

だけど、必ず一緒に夕食を食べてくれた。

その時間が好きで毎日夕食が待ち遠しかった。


優しくていつも笑顔なおばあちゃん。

おばあちゃんはいつもご飯を作ってくれて

私が好きなものばかり並べてくれる。


おじいちゃんはお酒が大好きだった。

顔が赤くなると私に説教ばっかりする。

だけど、公園に連れて行ってくれたり遊んでくれた。


だから私は寂しくない。

本当にそう思っていた。

お母さんってどんな存在なのかも分からなかったから。

だけど5歳の時、お母さんがいる友達が羨ましくなった。

理由は保育園で行われた親子遠足。

遠足にはお父さんが仕事で来れなくておばあちゃんが来た。

私は前日楽しみでしつこいくらいおばあちゃんと遠足の話をした。

だけど実際に行ったら友達は若いお母さんと来ていて、可愛いお弁当を持っていた。

おばあちゃんと来ているのは私だけだった。

早起きして作ってくれたお弁当もおにぎりも殆ど手を付けずに残した。


「あらあら、ユズはお腹空いていないのね。」


おばあちゃんはそう言いながら笑顔でお弁当箱をリュックに片付けた。

私はレジャーシートに座るおばあちゃんを一人残してお菓子を持って友達のところへ行った。


それから、おばあちゃんやおじいちゃんが保育園に迎えに来ることも嫌になった。


「今日はお父さん来てくれる?」


必ず朝になると聞いていた。

お母さん・・・いいな。

私がそう思い始めた頃の日曜日。

最近、お休みの日はお父さんと出かけることが多くなった。

それはエリカちゃんと会うためだ。

エリカちゃんはお父さんのお友達。

とっても美人でエリカちゃんの作るりんごパイが大好き。


「エリカちゃん、私のお母さんになってよ。」


それがどう言うことなのか5歳の私には理解できなかった。


「ユズちゃんいきなりどうしたの?」


エリカちゃんは心配そうに顔を覗き込んだ。

私は今まで言えなかった出来事を話た。

親子遠足のこと、お母さんが欲しいこと、エリカちゃんが大好きなこと。


そしてそれから3ヶ月経った寒い季節。


「ユズちゃん、お母さんにしてれてありがとう。」


そう言ってギューっと抱きしめてくれた。

エリカちゃんは本当に私のお母さんになってくれた。

とても嬉しかった。

お父さんも笑顔で私達を眺めていた。

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