3-6(完) 劉琨
今は
劉様には二十年あまり前にお会いしたことがあった。そのときの劉様はまだ三十にも届かない、
だからそれから十年ののち、劉様が北の最前線で陣頭に立ち孤軍も顧みず戦っていると聞いて、僕はいたく驚いた。僕が見た劉様というのは、書物のたくさん乗った
しかし北で戦い続けていたのは、紛れもなく僕がお会いしたあの劉様だった。洛陽が落ち長安が落ち、二人の天子が凶刃にかかって
その劉様も、ついに
そうして、思い出したことがある。劉様の肖像画を描こうとした矢先、絵の具を溶くのに使っている僕の豆皿が真っ二つに割れた。どう見ても凶事の前触れとしか見れない割れ方で、劉様のお屋敷の方達は大騒ぎだった。劉様は騒ぐ人々を下がらせて、豆皿の代わりにと、大体同じ大きさの、ただし価値は幾倍もしそうな皿を出してくだすった。僕がとんでもないと恐縮すると「いいから、いいから」とおっしゃって、帰りに「さしあげますよ」とそのまま持たせてくれたのだった。その皿も洛陽から命からがら逃げだしたときにか、あるいは道中で物盗りにあったときにか随分前にどこかへいってしまって、色や柄はもうよく思い出せなかった。
※
青年期には
三〇七年に
長い3世紀のルポルタージュ 久志木梓 @katei-no-tsuru
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