第3話
寝かせている子供たちの様子を見下ろして、ふむ。と思案する。
ラノベでよくある《クリーン》の魔法を思い返す。が。
「うーん・・・」
(英語だとどうもいまいちイメージわきづらいんだよなぁ)
ということで。自分なりに。
魔法はイメージ。
「《清潔》《除菌》《傷病完全治癒》」
言霊とゆーか、日本語の言葉に力をのせてみた。
パアッっと子供たちの体が光り、肌の垢まみれの地黒いくすみや泥砂、乾いた血の汚れ、フケなどなくなり、髪ものびっぱなしのボサボサではあるが、こざっぱりとした印象にはなった。
あちこちあった打撲や傷も正常な皮膚となる。
体自体は栄養とれてなくてお腹だけ異様に腫れてでかく、あとは小枝みたいにガリガリだけど。
「あ」
女の子の汚れて灰色だった髪が綺麗に真っ白になった髪の中に、三角獣耳らしい先っちょがちょろっと見えた。
しかも、足の間から、長い尻尾が。
《傷病完全治癒》で、なくなった尻尾が再生したのか。
男の子には、尻尾がない?
「まさかの獣人の子?」
(どひゃー!テンプレかよ!)
《異世界あるある》だ、と眉間に皺がよる。
こういうのが、運命の神に影で導かれてる感じがして嫌なものだ。
王道てっぱんだからなぁ。獣人しかり。エルフ、ドワーフ、しかり。
迫害される亜人たち。奴隷からの解放話。
俺も例外なく絡むのかよ。
「男の子は《豹人》と人間のハーフ。女の子は《豹人》の゛アルビノ゛です。
一族や家族から、先天性遺伝子異常による身体的特徴から、異端児としてそれぞれ差別され集落から爪弾きにされていたようです。
同じ集落内で似た境遇の二人なので、自然と常に一緒に行動するようになり、食べ物を探しに集落から出て離れた森の川の傍で二人弱って倒れているところを偶然奴隷商人に捕獲されたようです」
ヴァルスの淀みない説明に感心した。
(そこまで詳細によくわかるな。すごいな、《神の知識》)
「ありがとうございます」
「俺の心の声も駄々もれだな!」
聴くな!耳塞いどけ!と空しいツッコミにニヤリと笑むヴァルス。
イケメンめ!
「主(あるじ)もですよ」
知ってる!
「んじゃあこのまま街に入るのは駄目だな。
この子たちの対応のされ方がわかりきってる」
迫害対象だ。
この子たちの精神の安定の為には、誰にも邪魔されず、無償の愛をこれでもか!ってくらいに与えて甘やかしてやりたい。
愛される喜びを教えたい。
「そうですね。では、人のいない場所を選んで行きますか?
それとも」
「もちろん。俺の思考。理解るだろ?ヴァルス♪」
俺は、笑って人さし指をたてた。
◇◇◇
【創造魔法】は、本当に便利な魔法だ。
魔法は、イメージ。
「完ぺき!どーだ!人がゴミのようだ!」
「はいはい。主。出発しますよ」
ヴァルスが素っ気なく返す。
俺はヴァルスの手のひらの上で簡単に転がされてるチョロいんかよ。
「城の南側の庭。様々な種類の桜、綺麗ですね」
「だろ?俺的には白より、ピンクの桜が好きなんだよな」
そう。ヴァルスの名前をヒントに【天空の城】を、創った。
しかも日本風の城!
畳が1番だ!
でもベッドもあるよ。
今、空の上に浮かぶ大樹を中心に円錐形の大地が砂漠の空に浮いている。
ラピュ○のような廃虚ではなく、ちゃんと生活できる巨大都市(城下町)と城を創り、ちょっとした街には数多のゴーレムが畑を耕し、酒を作り、布を作り、鍛冶を行い、日用品を作り、酪農をし、店をやり、警備にまわり、生きた人間のような擬似生活をおくり始めている。
ゴーレムといっても、警備ゴーレム以外は人間に似せてるから、すべらかな動きで未来型AIロボットみたいなやつだ。
もちろん、地上で騒がれないために、天空の城は認識阻害の幻術隠蔽魔法をかけ、空気圧の保護結界も張り、見えないようにしてる。
ちなみに【龍の巣】みたいに雲での隠蔽も可能だ。
ロマンだ。うん。
ちなみに竜より龍の字が好きだという個人的な決め方だ。
「で、主。どうするんです?」
ヴァルスの言いたいことは、わかってる。
だが。
「ヴァルスがいるのに、女性体を創る気はないっつーの。
ゴーレムで充分」
獣人の子たちの世話に、女性体も必要では?と意見をもらったが。
俺が元女性として動けるから大丈夫。
「オカマでしたか。主」
「ちげーし!わざと言うな!テメェ!こら!ヴァルス!」
あいつ言い逃げた!
今はあの子らの傍には小さなキツネリスがいる。
あの子らが起きたら念話で知らせてくれる。
俺は指令室でメインコンピューターに名前を《大和(ヤマト)》と名付けた。
ダイ○ハウスと日本由来から共通として名付けた。
俺たちの家だからな。
好きなんだよ。あのCM。
日本大好きなんだよ。アイラブジャパンなんだよ。
懐かしの宇宙戦艦もちなみに大好きだ!
だから、南側に桜の多種類やコスモス、向日葵、紅葉、木蓮、百合、薔薇、すすきなど思いつく植物をたくさん創り植えた。
東側の畑にはもちろん、米も小麦もホップ、さまざまな果樹園もある。
配置が気に入らなかったら好きなようにカスタマイズできるから、創造魔法は、超便利。
海のエリア、川、森、山のエリアなどもある。
折角のチート。使わなきゃ損損。
『主ぃ。子ども起きたよ~』
◇◇◇
「ヴヴヴぅ~ッ!!!」
言葉はなく、獣のように唸り、歯をむき出しにし、肩を怒らせ、精一杯の威嚇と虚勢をベッドの向う。壁とベッドの間の蔭から女の子を庇いながらしてくる男の子。
なにこの子。可愛いんだけど!!可愛い過ぎるんだけど!!
女の子を守る気概がいっちょ前だし。
「大丈夫。痛いの、もうないよ。大丈夫。苦しいの、もうないから。
お腹すいてるでしょ?ご飯、置いとくね」
細かい肉と野菜を入れた柔らかな温かいお粥を、ベッド傍のチェストの上に置いた。
そして離れて、ドア付近のソファーに座り、黙って。
本を出して、読みはじめる。
見てないよー。気にしないで食べなよー。
私の存在に慣れなよー。
可愛いねー!
2、30分は長く低く唸っていたが、私が何もしないのを、少し警戒しつつも、バッ!っと器をとり、警戒しながら、フンフンと匂いを嗅いで。
ペロッっと、舐めた。
「ッ!!?」
もう一度、ペロッ。
「!!」
視線は俺をみたまま、警戒しつつ、器を女の子にグイグイ押しつけ。
もう1つの器を、バッ!とチェストから奪いとり、ガツガツペロペロとがっついて食べた。
女の子も、ハムハムと食べてる。
めっちゃ可愛いっ!!
癒され悶えてます!
なくなっても、ペロペロ器を舐めはじめたから。
「大丈夫」
ビクッ!!
俺の声に、飛び上がらんばかりにガタガタ!と動揺し、わたわたし始めたからクスッっと笑っちゃった。
「おかわりあるよ。いっぺんにたくさんいきなり食べたら、お腹がビックリして痛くなるから、今はおかわりは1回だけね」
亜空間倉庫からまだ温かい鍋を出して、お玉ですくい、手を差し出した。
「器、ちょうだい?」
ガン!
筋力がないだろうに、結構な力で器を投げられ、床に落ちた。
避けたけど、まぁ、まだ怖いよね。大人が。
囮に使われ、砂狼や巨大な花虫に喰われそうになったんだもんね。
死の恐怖を身近に感じてただろうし。
その前からもいろんな嫌な、怖いことがあっただろうし。
全ては、大人が。
器を拾い、お粥を入れ、彼に両手で差し出した。
怖くないよ。痛いことないよ。
何も武器はもってないよ。
両手、塞がってるでしょ?
笑顔を。愛を。
受け取って。
お願い。生きて。
これからは、幸せになろう。
家族になろう。
女の子が動いたら、男の子がビックリして、必死に止めようとするけど、ベッドの向うから手を伸ばし、俺から、器を受け取って。
男の子に、渡した。
「!?」
「クゥ…ン」
男の子の頬をペロペロ舐めて。
もう1つの空の器を俺に差し出した。
女の子は、メンタル強いなぁ~
理解るわ。元女だし。
うんうん。
お粥をついで、女の子に渡した。
ベッドの向う。
蔭で隠れながら夢中で食べてる彼らを眺めた。
(猫舌仕様にやや冷まして正解だな)
自己満足デス。
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