第4話

異世界転生してからまだ日が浅く、全然異世界を満喫どころか、ろくに人と関わる前に、拒否ってる今。


「エクラ。ゲイル。こっちに来てごらん」



「「はあい。おにぃたん」」


まだ言葉を覚えたてで、たどたどしい口調で応え、とてとてと、可愛らしく来てくれる二人に、にやけたくなる。



あれから地道にコミニュニケーションをとり続けた結果、ヴァルスと共に敵ではない。痛いことしない。自分たちにとって美味しいご飯をもらえ、甘いおやつもくれ、笑顔で抱きしめてくれ、頭を殴らず、優しく優しく撫でられ、頬に頬をくっつけスリスリされるのも嫌じゃなく。目一杯体を動かし遊ぶことを教えてくれて。

自分たちを怖いものから守ってくれる守護者だと理解してもらい。


言葉を少しずつ教えれば、乾いた砂に水が染み込むように、教えること、知ることを貪欲に吸収し、知識が増えていき。


たくさん遊んで、寝て。食べて。

筋力もついてきつつある。


髪も切り揃え、エクラの髪には可愛い薄ピンクのリボンや飾りゴム、編み込みや毎日違った髪型にしてあげ、毎朝毎朝鏡を見て変わる自分に頬が上気して興奮し喜んでる。

尻尾がひゅんひゅん揺れてるし。


ほんと、可愛い表情をするようになった。


身嗜みもきちんとしてやって、栄養面も健康的に少しずつよくなって幼子の可愛さも日々アップしていく。

もうメロメロだ。


怖がっていたのが嘘のように積極的に動けるようになり、今は自由に自分の意思で部屋を出、外に出て、ちゃんと帰ってくる。

最初はいつも二人どこに行くにもくっついてビクビクしながら周りを警戒しっぱなしで一緒だったが、今じゃ時々バラバラに行動している。


名前もなかったらしく、俺が男の子はゲイル(英語で疾風)。

女の子はエクラ(フランス語できらめき、輝き)と名付けた。



その名の通り、ゲイルは足が早く、動きは俊敏だ。

木にもスイスイと登る。


短髪の黒黄色の不思議な髪色に黒色の綺麗な目のゲイル。

木の上からのドヤ顔がめっちゃ可愛い!いや、カッコいいぞ!!


エクラはアルビノ特有の白髪や産毛が光に当りキラキラと綺麗だし。

翡翠のように黄緑色の綺麗な目で俺を見上げ、俺のことを「おにぃたん」と呼ぶ。

歓喜にうち震えるくらい萌え萌えだ!




「「おねぇたん?」」


「違う。俺はお兄ちゃんデス」


(あぁッ!首をコテンと!俺を見上げる円らな二人の眼差しが愛くるしいッ!!

でも否定!オカマじゃない!怖がらせるから強くは言えないぃー!)


ヴァルス!笑うな!!




ヴァルスのことは、大きいから、「大兄(おおにい)たん」と呼んでる二人。

めっちゃ可愛い!!

舌ったらず、今だけ限定。めっちゃ

可愛い!!何度も言う!


ヴァルスも笑顔で長身の体躯を怖がらせないように、いちいち膝をつき、屈んで目線を合わせ接してる。

それでもまだ高いけどな。


ヴァルスの強さ、逞しさにゲイルは目をキラキラさせながら見上げてる。


(う、うらやましぃ)


◇◇◇


ここ最近は12畳の和室に布団を敷いて4人で寝てる。


俺が和室を私室にしていて、布団を敷いて寝てるのだが、二人が時々夜中にこっそり?(本人たちはそのつもり)布団の中に潜りこんできてひっついて寝るようになったから、嬉しいし、ま、いっかと。

そしたらヴァルスも来て布団並べて一緒に寝るようになった。

最初のベッドの部屋は二人の私室にしたんだが、あんまり使わなくなってきた。


なつかれて嬉しい。

愛を知ってくれて嬉しい。


家族になれて、嬉しい。


これから、もっともっと幸せになろう。


お前たちがいてくれれば、俺は。


私は。





生きていける。








「主。依存し過ぎは駄目だ。主の心がいつか壊れる」







俺たちの生に、終わりはないから。






二人は、いつか・・・・・、






「わかってる。ヴァルス」


気遣わしげにする半身に苦笑する。



「折角の異世界なんだから、アイテムコレクターになろうかな」


朝、食後のコーヒー(無糖)を飲みながら、ヴァルスに提案してみた。


「ああ、それはいい。主が好きそうな趣味ですね」


「だろう?魔石も存在するし、魔道具も作られてるし、珍しい希少な植物とかあるし、ダンジョンも在る。

ワクワクするよな?ゲーム感覚で!」


食後に絨毯の上、カラフルな木製の積み木で仲良く遊んでる子どもたちを眺めながら、生前やってたビルダー系の素材採集ゲームを思い出す。



「では、白地図に塗りつぶしをやりながら、世界を隅から周りますか」


「いいね!」


親指をビシッっと立てて片目を瞑ったら、「「?!いいね!」」と子どもたちは親指をたて、両目をぎゅっと。

ぎゅっと!

だはっ!!

ウィンクが!できない!!


可愛いッ!!!真似っ子!!


可愛いッ!!!




「主。顔が残念に」


「一言余計!!」




◇◇◇


城下町に散歩にきた。


AIゴーレムたちがのんびり動いてる。


生産された殆んどの素材は亜空間倉庫機能がある城の蔵に保管されていく。

腐ることもなく、劣化することもない。



この天空の城で採れる素材は全てノーカンにする。

俺のチートで創ったものばかりだし、地球産ゆかりのものばかりだから。




「花見でもするか」


4人家族で桜の木々の下。

シートを敷き、5段お重を広げてわいわい賑わった。



「おはな、きれぇね」


エクラがほけぇとシートに女の子座りして見上げ嬉しいことを言う。


「ヒラヒラ!ヒラヒラ!」


ゲイルが興奮して微風に舞い散る桜の花びらを掴もうとあちこちジャンプするから、ヴァルスに後ろから両脇を捕まれ抱えられた。

そのまま肩車。


「おお!」


さらに興奮するゲイル。


「おおにぃたん!エクラも!エクラもぉ!」


ヒシッ!っとヴァルスの太い足に抱きついてエクラは顔をグリグリ。


カワユス!!!めっちゃ羨ましいぞ!!このやろう!ヴァルスめ!!



「主。理不尽な」


「エクラ。エクラは俺がしてやるからな」



「おにぃたん、できりゅ?」


「もちろんだ!ほら!高いぞー」



「きゃー!?」



頭上での子どもの甲高い笑い声に、涙がでそう。


泣くな。笑え。








「幸せですね。主」



「ああ」



あぁ。そうだな。


幸せだ。



俺も。お前も。この子たちに幸せにしてもらってる。


俺たちのほうが。

幸せをもらってる。



「ゲイル。エクラ。大好きだぞ。・・・愛してる」




「エクラもッ!だいちゅき!!」


「ゲイルも!ゲイルもおー!!」





「「ははっ、」」




珍しく、声をだして一緒にヴァルスも笑った。














地上では砂嵐が吹き荒れている。


砂漠の街が見える。


訪れるつもりだった、初めてとなるはずだった異世界の街。


訪れる気はもうさらさらない。



そろそろあまり動かず停滞していたが、動くか。


この世界の森を散策したいし。





「大和。出発」



『了解』




天空の城が、動き出した。

















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