78.キミの忘れかたを教えて 感想

 フライさんの美しいイラストと、切ない感じのタイトルが気になって手に取りました。


 このタイトル秀逸ですよね。それほど長文でもないのにグッと心に残るし作品の雰囲気にも合ってる。センスがあると思います。



◆タイトル『キミの忘れかたを教えて』

◆作者 あまさきみりと

◆イラスト フライ

◆レーベル 角川スニーカー文庫

◆発売日 2018/09/18


◆感想


 残された余命は半年と宣告された主人公の修。


 彼は生きる価値などないと大学を中退してニートとなり、生きるのを諦めて実家に寄生するようになった。


 そんなある日、昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れる。


 そこには芸能人となってしまった因縁の幼馴染み・桐山鞘音がいて、この出会いが再び修の運命を突き動かす――


 

 余命半年と宣告された主人公の修。これだけ聞くとよくある難病物みたいですが、どちらかというと青春やり直し系の音楽もの。


 修みたいに病気でなくとも、大学生活に疲れたり引きこもり気味になったり、田舎特有の閉塞的な空気にうんざりしたり、そんな思いは誰しもが抱えたことはあるのではないでしょうか。


 そんな鬱々とした日々を修が幼馴染で歌手となった鞘音と再会することで物語は動き始めます。


 ノスタルジックな田舎の雰囲気の中、リーゼちゃんやトミさん、エミ姉と出会い、次第に明らかになっていく修や鞘音の過去。


 祭りの雰囲気や昔通った学校や児童館、川や旅館の風景の描写がどれも情感たっぷりで素敵ですね。


 夢だとか才能だとか努力。思い通りにならず諦める人生。沢山のことを考えさせられました。


 あとがきを読むに、統廃合で無くなってしまった母校や故郷を思って書いたのだとか。読んでいてノスタルジックな気分になりました。


 単巻で終わりの作品かと思いきや、この巻はプロローグみたいなものでどうやら続きがある模様。読んでみようかな。



◇『夏へのトンネル、さよならの出口』


https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054890605798


◇『――ねぇ、柴田』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054886084786

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