60.親しい君との見知らぬ記憶 感想

 こちらの作品、表紙の美しさに惹かれて手に取りました。女の子も可愛いし、色合いも凄く綺麗。絵師さんいい仕事してるなぁ~!


 作者の久遠さんは第16回えんため大賞優秀賞作品『黒崎真由の瞳に映る美しい世界』で2015年にデビュー。他の作品に『近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係』があるそうです。


◆タイトル『親しい君との見知らぬ記憶』

◆作者 久遠侑

◆イラスト Tiv

◆レーベル ファミ通文庫

◆発売日 2017/11/29


◆感想


 行成の夢によく出てくる幼い頃遊んだ友達。だけど、アルバムを見返してもそんな子は存在しない。


 ところがある日、初めて訪れた場所に既視感を覚え、そこで夢の中の少女、優羽子と出会う。


 そして何と彼女もまた夢で幸成と出会っていたと言う。それから二人はその現象を確かめ合うため、一緒に出かけるようになり、やがて恋に落ちるが――というお話。


 最初はあらすじを読んで、「ああ、また最近流行の泣ける感じの青春SFね」思いました。


 でも読んでみると描写が色鮮やかで繊細、流れるような文章で、有り体に言うと文体が凄く好みでした。


 懐かしい情景が次々と浮かんできて、心の底がざわざわするような感じの文章です。


 遊園地での出会いの描写が特に好きでゾクゾクします。


 平行世界と干渉するメカニズムなんかのSFの部分も論理的で、私のような素人でも分かりやすく、説得力のあるものでした。


 フレーバー程度にSFをしているのではなく、がっつりSF要素を組み込んでくる辺りにも他の青春SFものとの違いを感じました。


「記憶のかけらあつめ」も可愛いくてワクワクしますしね。


 『君の名は』みたいに派手でドラマチックなシーンは無いし、ラストの終わり方もちょっとあっさり気味でしたが、そこがまた好みです。


 とにかくツボをついてくるので、この作者さんの他の作品も読んでみようかな。


 知らないはずのものを知っている。会ったこともないのに共通の記憶を持っている、そんな不思議な現象がリアルに感じられる、そんなちょっぴり不思議で瑞々しいお話です。




◇ライト文芸っぽいお話が好きな方に……


・『Hello,Hello and Hello』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054885983088


・『三角の距離は限りないゼロ』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054886084786

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