第27話 パンツがない!!

 マイは肩幅に広げた脚の付け根の、〝つるつる″で〝ぷにぷに″の双丘を、その真ん中を縦に走るスリットに沿うようにあてがわれた両手の親指に〝くにっ″と左右に押し広げられ、その内側に潜む種皮から〝ちょこん″と顔を覗かせながら〝ぷくっ″と膨らむ新芽も、その下で艶めかしく開く2枚の花びらも、そして花びらの内側の最も敏感な粘膜の、新芽のすぐ下にある針で突いたようなちっちゃな穴や、ツルギに見つめられて恥ずかしいのか〝きゅっ″と閉じたままマイの息づかいに合わせて〝ひくっ、ひくっ″といやらしくヒクつく湧泉口、更にはその後ろで〝きゅっ″と閉じるまで、その全てをツルギに晒しながらを拭いていた。

「ね、ねぇツルギ」

 恥ずかしくて逸らしていた視線を下に戻すと、自分のを凝視するツルギと目が合った。

「なに?」

「もう終わってもいい?」

 こちらを真っ直ぐ見つめるその瞳に、自分のを見つめられていることを改めて思い知らされたマイは、恥ずかしさのあまりすぐに視線を逸らしていた。

「拭き終わったの?」

「うん。だから、いい?」

「うん、いいよ」

 その口ぶりから彼女はあまり納得はしていなさそうだったが、ツルギが触手をほどくと、マイは大慌てで彼女の上から飛びのき、そのまま衣装ケースの前にダッシュして、何やらゴソゴソ捜し始めた。

 それは照れ隠しとか、少しでも早く話題を変えたいという気持ちも勿論あったが、マイにはちゃんとそうする理由があった。

「ハニぃ、なに捜してるの?」

「パンツ」

「え!?なんで?」

「なんでって、履いて寝るから」

「なんで??」

 ツルギはワケが分からないといった様子でマイに問いかける。

「いつの履いてないのに、なんで寝る時は履くの?」

「う~ん、気持ちの切り替えかな」

 ツルギに背を向けたままマイが言葉を続ける。

「切り替え?」

「パンツ履いてない時って、待機中とか戦闘中とか、いつ死ぬかも分からない極限の緊張状態のなかにいるでしょ?

 だから、勤務時間が終わって部屋に帰ってきて、お風呂に入ってパンツを履くとホッとするというか・・・今日も無事生きて帰ってこれたことを実感できるんだ」

「ふ~ん」

「ツルギ、下着の替えは?」

「ないよ」

「だよね。ちょっと待って、パンツの買い置きがあるはずなんだけど、・・・よかったら履く?」

「え!?いいの?」

「サイズが合うといいんだけど・・・」

「ありがとうハニぃ、すっごくウレシイ」

 だが、

「あれ?」

「どうしたの?」

「1枚しかない」

 マイはケースの中身を全て床に撒き散らし、1枚のパンツを握り締め呆然としていた。

「いいよ、それはハニぃが履いて」

「え!?でも」

 そこまで喋ったマイの唇を、ツルギは人差し指でそっと押さえ、

「ダイジョウブ、私はいつも裸で寝てるから」

 と笑顔で答えていた。

 するとマイはその手を握り、

「じゃ、じゃあ、私も裸で寝る」

 と、顔を耳まで真っ赤に染めながら呟いていた。

「え!?え?ハニぃも?なんで?」

 マイからの思いがけない一言に、ツルギはになりながら、そう聞き返すので精一杯だった。

「だって、ツルギだけ裸で寝させるなんてできないよ」

 しかし、決意の眼差しで見つめられながらそう言われ、

「は、ハニぃがそれでイイなら、い、いいんじゃない?」

 パンツを履かない。ただそう言われただけなのに、ツルギはもう呂律ろれつが回らないぐらい、ワケが分からない状態になっていた。

「じゃ、じゃあ、我が家のベッドにご案内しまぁす」

 マイはそう言うと、裸のままツルギの手を引いてベッドまで歩くと、そのまま寝転がり端へと移動した。

 が、ツルギはどうしていいか分からないといった表情で呆然と立ち尽くしていた。

「ツルギも来て」

 そう言いながら、ベッドの空いているスペースを〝ぽんぽん″叩く。

「う、うん」

 ツルギがぎこちない動きでマイの隣に寝転がると、マイが掛け布団を掴みを覆いかぶせるように自分と彼女に掛ける。

 ツルギは、枕に頭をうずめ、鼻まで掛け布団を被っていた。

(は、ハニぃの匂いがする)

「ね?寒くない?」

 〝びくっ″

 枕や掛け布団から鼻孔をくすぐるマイの香りに興奮し、〝くんくん″していたところを真横から、しかも超至近距離から見つめられていたことに気付き、ツルギは思わずマイの顔を見た。

 真っ直ぐな瞳に見つめられ、我に返ったその顔がみるみる赤く染まっていく。

「大丈夫?」

 そう言いながらマイは、心配そうにツルギの顔を覗き込む。

「う、うん、ダイジョウブ」

 だが、対するツルギは後ろめたさもあってうつむいたままだ。

 その、いつもとは明らかに違う態度に異変を感じ取ったマイが、

「ね?やっぱり寒いんじゃない?待ってて、パジャマ持ってくるから」

 そう言って起き上がろうとする。

 しかし、そんな彼女をツルギは〝ぎゅっ″と抱きしめていた。

「つ、ツルギ?」

 突然抱きしめられ、マイが戸惑うの声をあげる。

「こうすれば温かいよ。ね、ハニぃ、朝までこうやって〝ぎゅっ″ってしていたい。いい?」

「え!?」

 驚きのあまり目を丸くするマイだったが、

「だめ?」

 と、甘える子猫のような瞳でみつめられ、

「じゃ、じゃあ、今日だけね」

 そうマイが受け入れた瞬間、

「ありがと~」

 ツルギは更に強くマイを抱き締めていた。

「もう、甘えん坊なんだから」

 マイもお返しとばかりにツルギを〝ぎゅっ″と抱きしめる。

 その結果2人の、瑞々しい果実のような膨らみが密着する格好になっていた。

 その若々しい張りと弾力で互いに圧し潰し合いながら、互いを弾き返し合う4つの膨らみが〝たわわ″に揺れ、その頂点で〝つん″と自己主張する桜色のちっちゃな蕾が、互いの膨らみに圧し潰されるように埋もれながら〝こりこり″擦れ合っていた。

「ぁん」

「んんっ」

 その瞬間、から火花のように弾けた〝ぞくぞくっ″とする快感に、2人思わず艶めかしい声を漏らしてしまっていた。

「ご、ゴメンナサイ」

 ツルギは、思わず漏れてしまった自分の声に驚いた様子でそう言うと、大慌てでマイから離れ、彼女に背を向けてしまった。

「・・・・・・」

 そんな彼女を、マイは後ろから〝ぎゅっ˝と抱きしめた。

「ハニぃ?」

 突然そんなことをされ、ツルギが思わず戸惑いの声をあげる。

 そんな彼女の耳元でマイがささやく。

「ホントだ、寒くない。ね、ツルギ?」

「な、なに?」

「こうやってツルギのこと〝ぎゅっ˝てしてていい?」

「・・・うん」

 ツルギの顔が〝ぱっ″と明るくなるのが分かり、マイまでなんだか嬉しい気持ちになる。

 ツルギの2つの膨らみがマイの背中に密着することで、圧し潰されたマイの豊潤な膨らみが、まるでツルギの背中を弾き返さんと〝たわわ″に弾む。

 マイは、その先端で〝つん″と上向く桜色のちっちゃな蕾が、ツルギの背中と〝こりこり″擦れる感覚に、そしてツルギは肩甲骨の辺りを圧し潰すように圧迫するマイの温かい温もりと、その中に埋没しながらも自己主張するかのように背中を〝こりこり″するマイの蕾の感覚に戸惑っていた。

「ね、ハニぃ」

「な、なに?」

「あ、・・・あのね」

 ツルギの声が急にかしこまるのが分かり、マイも何事かと身構える。

「どうしたの?」

「あ、あのね、あの、ハニぃにお願いがあるんだけど・・・」

「お願い?」

 

 普通に考えれば、は宿題を見せて欲しいとかCDを貸して欲しいとか、そういうことになるだろう。

 だが、ツルギに言われると、どうしてもそれ以外のを考えてしまう。

「お願いって?」

 「えっと、あのね、その、お願いの前に、私、やっぱりハニぃの方を向きたい。向いてもいい?」

「うん、いいよ」

 それを聞いただけで、胸の奥が〝どきっ″と脈打つのを感じながらマイはそう言っていた。

「ありがとう」

 ツルギは身体を回転させマイの方を向いた。

「ハニぃ、〝ぎゅっ″ってして」

 頬を赤く染め、うつむいたままそう言うツルギを、マイは〝ぎゅっ″と抱きしめていた。

「ハニぃ」

 横向きに寝ても形の全く崩れない、果肉のたっぷり詰まった豊潤に実る果実のような4つの膨らみが密着し、圧し潰し合いながら互いを弾き返さんと〝たわわ″に弾み、その頂点で自己主張するかのように〝つん″と尖るちっちゃな桜色の蕾同士も密着する膨らみに埋もれながら〝こりこり″擦れ合う。

「つ、ツルギ」

「な、なに?」

 互いに見つめ合うその顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。

「こ、これでいいの?」

「あ!!えっと、それでね、こ」

「こ?」

「子守歌を歌ってほしいの」

「え!?子守歌???」

 御願いの要領が全く分からず、戸惑い気味にマイが聞き返す。

「サンドラがね、たまになんだけど仕事から帰ってきた後に泣いてることがあって・・・」

「あの司令が?」

「うん。『私がもっと早く指示を出していたら皆死なずにすんだ』とか言って、自分を責めて泣いてるの」

「あの司令が・・・」

「それでね、泣いてるサンドラを彼女が〝ぎゅっ″って抱きしめて子守歌を歌ってあげるの。そうされると落ち着くんだって。・・・そ、それでねハニぃ、あの、その、私にも歌って、・・・だめ?」

 マイは、そう言いながら上目使いに見つめて来る彼女の頭を抱き寄せ、髪を優しく撫でながら、昔おばあちゃんが聞かせてくれた子守歌を歌い始めた。

 やさしい歌声に部屋の中が満たされていく。

 どれほどの時間が流れただろうか?

「ツルギ?」

 マイがふとツルギの顔を覗き込むと、彼女はマイの首元に頭を預けたまま寝息を立てていた。

 彼女の子守歌を聞きながら、ツルギはいつの間にか寝落ちしていたのだ。

「・・・おやすみなさい」

 髪を撫でながらそうささやき、マイも寝ようとしたその時、ツルギの顔に無数の傷痕が浮かび上がった。

「え!?なに???」

 マイは慌てて掛け布団を剝ぎ取った。

「!!」

 その目に映ったのは、全身傷まるけで横たわるツルギの姿だった。

 ガリレオを元の軌道に戻し貨物倉庫に帰還した時、リンや皆から全身の傷痕を心配された彼女は、マイに要らぬ気づかいをさせぬよう、クラーケンやフェニックスになるように、自身を全く傷のない姿にさせていたのだ。

「な、なにこれ?」

 マイはぐったりと力なく垂れる彼女の手を掴み見た。

 そこには、掌が裂けてもおかしくないほどの大きな傷痕が生々しく刻まれていた。

「・・・これって」

 マイは、ハーケリュオンの柩の間での彼女の姿を思い出した。

 両手のは、ツルギを串刺しにしていたホーリーランスの傷痕に間違いなかった。

 しかも、掌や肘や肩や胸、そしてみぞおち等に残るランスの痕だけでなく、マイをかばってブロッケンに全方位から襲われた時の痛々しい傷痕までもが全身に刻まれていた。

「・・・ツルギ」

 マイは言葉を失った。

 プールでブロッケン警報を聞いた時、出撃したかったのは彼女ではなく自分だった。

 言わば、自分がツルギを巻き込んだのだ。

 にも関わらず自分は意識を失い、その間にツルギは・・・。

 彼女は自分を助けるために脳外科手術を受けていた。

 それだけではない。

 なぜ彼女は封印されることを受け入れたのか?

 彼女なら、目の前に立ちはだかる全てを有無を言わせず蹴散らし、どこかに逃げることなど造作もなかったはずだ。

 しかし彼女は串刺しにされ、あそこで封印されるのをおとなしく待っていた。

 それは何故か?

 彼女がそれを拒否したり逃亡したりしたら代わりに自分を、マイ・スズシロを封印すると言われたからではないのか?

 そう結論付けることは難しいことではなかった。

(私をかばって?ううん、私を守るために脳の外科手術だけでなく、全身を串刺しにされて封印されるのを待っていたの?

 あんな暗くて寂しいところで、たった1人で・・・)

〝ぽたっ、ぽたっ″

 ツルギの頬に、大粒の涙が何滴もしたたり流れ落ちていく。

 それは、マイの目から溢れた大粒の涙だった。

「なんで?どうして私なんかのために」

「・・・ん、ハニぃ」

「!!」

 ツルギに突然名前を呼ばれ、マイは慌てて涙を拭う。

 が、

「私もう食べられない・・・むにゃむにゃ」

 ツルギはそう言うと、かたわらにいるマイの手の平を枕にするように頬をり寄せながら可愛い寝息を立てていた。

「・・・もうツルギったら、どんな夢見てるの?」

 その、あまりに場違いな仕草と寝言に思わず苦笑する。

 そして、ツルギの頬に落ちた自分の涙を指で拭きながら、ネコ科の牝獣のような、美しくて凛々しいけれど、ちょっと近付きがたい雰囲気のある普段の彼女からは想像できない、まるで子猫のような寝顔に見惚れていた。

「ツルギって、こんな子猫みたいな顔して寝るんだ」

 あまりに可愛らしい寝顔に導かれるように、顔を近づけていく。

「かわいい」

 マイはそう言いながら、ツルギの唇にキスしていた。

 そして、我に返った。

(・・・え!えぇ?私、なにしてるの?)

 離した唇を思わず押さえる。

 にはまだツルギの唇の感触が残っていた。

(え!?え?もしかして私、ツルギにキスした?)

 そう。彼女は今までに何回もツルギとキスしてきた。

 だがそれは、全て彼女からキスされたもので、唯一〝ゴミ箱″の中でマイからしたのも、「キスして」と頼まれたからだった。

 マイが自分からキスしたのは、正真正銘これが初めてだった。

(ど、どうしよう?私、ツルギにキスしちゃった)

 頭から蒸気が〝ぴゅ~~~っ″と吹き出るぐらい顔が熱く火照り、心臓が口から飛び出るのではないかというぐらい〝バクバク″脈打つ。

 そんな心の動揺を必死に抑えつつ、マイはツルギの寝顔を覗き込んだ。

 彼女は寝息を立てたままピクリとも動かなかった。

「えっと、えぇっと、・・・寝てる、よね?よし、大丈夫。バレてない。・・・そ、そうだ!!もう遅いし寝よう。うん、そうしよう」

 マイは大慌てで、しかしツルギを起こさぬようそっと身体を密着させて掛け布団を頭まで被ると、

「これでよし、っと。ツルギ、おやすみ」

 そう言って目を閉じた。

 が、

(う~だめだ~、ぜんぜん寝れないよ~~)

 目が冴えてしまって全然根つけず、マイはツルギの体温を感じながら目を閉じて、ただじっとしていることしかできなかった。

 しかし、まさにその時、は起きた。

 彼女の目の前で突然掛け布団が天井まで吹き飛んだかと思うと、次の瞬間には、その身体が拘束され自由を奪われていた。

「!!」

 まるでテーマパークのアトラクションに乗っているかのように身体がデタラメに揺れる。

 しかもその身体は、鉛のように重く〝ぴくり″とも動かない。

 何か〝ぬるぬる″する太いものが全身に巻き付き、自分を振り回している。

 眼下を見下ろした彼女の視線に飛び込んで来たのは、クラーケンへと姿を変えたツルギだった。

 マイは、突如としてツルギの触手に全身をぐるぐる巻きにされ、天井近くまで持ち上げられていたのだ。

「・・・つ、ツルギ、なにしてるの?ほどいて」

 全身を〝ぎりぎり″締め上げられる激痛に耐えながら下に寝転がるツルギに呼び掛ける。

 だが、

「・・・あん、ハニぃ、やん」

 彼女は目を閉じたままそう呟いていた。

 しかも、自らの指を触手化させて豊潤な胸の膨らみを揉みしだき、もう片方の手も触手化し、脚の付け根へと潜り込ませ、なにやら蠢かせているのが見える。

「え!?ツルギ、私の声、聞こえてる?」

 が、呼び掛けるマイの声に何の反応もなく、

「ぁん、やん、だめ、ハニぃ」

 ツルギは甘い声を漏らし、触手を動かし続けるが、目は閉じたままだった。

「・・・もしかして、寝ぼけてる?」

 そう。ツルギは寝ぼけていた。

「あん、どうしたの?今日のハニぃ、スッゴく積極的」

「え!?」

「え?だめ、そ、そんな恥ずかしいこと私できない」

「は?」

「・・・でも、でも、ハニぃがどうしてもって言うのなら、・・・いいよ」

「ちょ、ちょっとツルギ、どんな夢見てるの?私、夢の中でもそんなことしないからね。何させてるか知らないけど」

 しかし、そんな抗議が夢の中にいるツルギに届くはずもない。

 しかも、触手の動きが寝ぼけているとは思えないほど艶めかしくなっていく。

〝ぬるぬる″の触手が2つの膨らみに吸盤で吸い付き揉みしだきながら、その頂点で〝つん″と自己主張する桜色のちっちゃな蕾を触手の先で転がすように舐め回したり、歯で甘噛みしたり〝ちゅうちゅう″吸う。

 それは脚の付け根も同じで、数え切れないほどの触手がの潜り込み、〝ぬちゅぬちゅ″の〝ぐちゅぐちゅ″に掻き混ぜ、掻き回す淫靡な音が〝くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ″と寝室に響き渡る。

「つ、ツルギ」

 それは信じられない光景だった。

 いくら寝ぼけているとはいえ、まさかツルギがしているところを見ることになるなんて夢にも思っていなかった。

 そしてツルギは、を迎えた。

「はぁあん、ハニぃ、だめ、私、もう、んんっ、イク、イクから、イっちゃうから・・・・・・・イクうぅぅっ」

 絶頂を迎えた瞬間、ツルギの身体が〝びくっ、びくっ″と痙攣するかのように小刻みに跳ね、触手がマイの身体を〝ぎゅ~~~~~~~~~~~~っ″と締め付けた。

〝バキバキバキバキ~~~~~~~~~っ″

「ほぎょ~~~~~~~~っ」

「え!?」

 そのマイの断末魔の叫びを聞いてツルギは目を覚ましていた。





 その十数分後、マイは培養液に満たされた治療カプセルの中にいた。

 そして、恐ろしい形相で見つめる視線の先には、膝を床につき頭の上で両手を合わせるツルギの姿があった。

 それだけではない。

「で、いったい何があったの?」

 カプセルが並ぶ医療エリアを見渡せる通路にはハルカを筆頭にチーム36の皆が集まっていた。

 「全身の骨が砕けたんですって」

 そう説明するアヤに、

「信じられない。いったいどんなプレイをしたらそうなるのかしら?」

 エマも驚きの声をあげる。

「そんなプレイがあるか」

 そうマイが反論するが、

「アンナさんはその事知ってたんですか?」

 何故か聞く耳持たずでエマはアンナにそう問いかけていた。

「知らなかった。まさかマイに趣味があったなんて」

「ちょ、ちょっとアンナなで何言ってんの?」

「ね~ね~ツルギちゃん、ホントのところはどうなの?」

「リン、なに聞いてるの?」

「だってハニぃがスッゴいから、私もうワケが分からなくなっちゃって」

 ツルギがそう言いながら、耳まで真っ赤に染まる頬に両手を当ててデレまくる。

「ツルギまで何言ってるの?寝ぼけたあなたが私の身体を触手でぐるぐる巻きにしてバキバキにしたんでしょうが。だいたい全身の骨を砕くプレイってどんなプレイよ」

「アンナお姉ちゃん、プレイってなに?」

「いいによ、アリスはそんなこと知らなくて」

 そう、そこにはマイの身を案じたアリスも駆け付けていた。

「ちょっと2人共、なにしてるの?」

 皆の会話をそこで遮ったのはサンドラだった。

「ツルギ、なんでマイをハーケリュオンに連れて行かないの?」

 ハーケリュオンのコックピットに入れば加護の力で2人の傷はみるみる間に治癒する。

 なのに何故、医療エリアで治癒カプセルに入っているのか?

 それはサンドラでなくても不思議に思う話しだった。

「ハニぃがもうハーケリュオンに乗らないって怒ってて・・・」

「えぇっ、それホント!!マイ、もうハーケリュオンに乗らないの?」

 ツルギの口からこぼれた一言にアンナが喰い付く。

 が、

「何言ってるの?こうしてる間にブロッケンがあらわれたらどうするの?子供みたいに拗ねてないで早く傷を治しなさい。ツルギ、早く」

 サンドラにそう言われツルギは、

「は~い」

 そう返事すると、マイが入るカプセルの非常ボタンを押していた。

「ちょ、ちょっとツルギ」

 が、皆が驚きの声をあげるより早くカプセルが開き、マイは大量の培養液と共に床に押し流されていた。

「ま、マイ~~~~~~っ」

 全身の骨が砕けた激痛に動けない彼女をツルギは〝ひょい″と肩に担ぐと、そのまま軽快な走りでカプセル・ルームを出て行ってしまった。

 チーム36の皆はそれを〝ぽかん″と見ていたが、

「ま、マイちゃんがさらわれたぁ」

 リンのその一言で〝はっ″と我に返り、慌てて後を追いかけ始めた。

「ま、待ちなさいツルギ、私のマイをどこに連れて行くの?」

「え!?

「い、いや、私のっていうのは親友って意味で、・・・って、今はどうでもいいでしょ?そんな話」

 そう言いながら追い掛ける先でも、ツルギに担がれながらマイが顔を耳まで真っ赤に染めて叫んでいた。

「止めてツルギ、降ろして。お尻、お尻が丸見えだから」

 そう、マイはお尻を前にしてツルギの肩に担いでいた。

 そのため、マイのお尻がツルギの顔のすぐ横にあり、周りから丸見えの状態になっていたのだ。

「ダイジョウブだよハニぃ、それぐらいじゃ死なないから」

 だがマイからは、すれ違った人たちが〝とんでもないもの見た″という表情で振り返る様子が全て見えていた。

「大丈夫じゃないよ、私もうお嫁に行けない」

「ハニぃ、じゃあ、じゃあ、私の嫁さんになって」

「え!?」

「だめ?だめなら私がハニぃのお嫁さんでもいいよ」

「・・・ツルギ」

「なに?」

「・・・ううん、なんでもない」

「・・・」

 2人は顔を真っ赤に染めたまま、ハーケリュオンが係留されている貨物倉庫目指して走り続けていた。




                            〈つづく〉

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シンクロナイズド・ダイバーズ 木天蓼 亘介 @w7089-33152w

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