第6話表に出る裏
うん、全く思いつかないな。魔王を裏切らないことは言うとして、それ以外に何を言えばいい?
「君が勇者だったってことは?」
「あ、そうだったな」
「あと、他は勇者がどんな奴かは?」
「1人しか見てないけど......そうだ!いやダメか......」
契約してなければスパイみたいなこと出来たのにな。
「ん?あ!それいいね!お披露目会終わったらやろう!」
「んん?それ側近としてどうなのよ?というか、どうやんの?契約あるし」
まずバレたら終わりとかホラーゲームじゃあるまいし。荷が重過ぎるんだが......
「顔を変えることぐらい容易いことさ。魔宝を使えばどうにでもなるし」
「そんな魔法あるんだ。やっぱ違うなぁ」
「勘違いしてないかい?魔宝は、魔の宝って書くのさ。ちなみに、あの契約書も魔宝ね」
なんて物使ってんだよ!宝だよ?!全く、この魔王は時々とんでもないのと仕出かすな。
「大丈夫、大丈夫。その気になればいくらだって作れるから」
魔王によると、
「供物って?りんご?梨?米?羊羹?」
「作るものに価する器、聖なるものなら天使とか聖神の抜け殻。邪なるものなら悪魔とか邪神の魂。まあ、ゴミ箱感覚で聖神捨てたら今志水って言う奴が着てる鎧になった。どうやら、願わないで捨てると誰かのものになるらしい」
ほへー、この世界のことちゃんと知らなきゃな。ふと、時計を見る。魔ノ国では、普通に置いてある。
「5時半ですか、もうそろそろですから、行きましょう魔王様」
「また急にスイッチ入れたねぇ。うん、行こうか」
++++
「これより!『勇者討伐委員歓迎会』を始める!」
「総員!乾杯!!」
「「乾杯!!!」」
うん、思ってたんと違う。もっと堅苦しくて、気が抜けないような感じかと......
「それもそうさ、幾千万年悩まされていた勇者に対抗できる手段ができたんだから」
「先代魔王は、どうしていたんですか?少なくとも、落とし穴とか使えば殺せたんじゃ」
「勇者は、死んだらコンテニューしてくるのさ。流石に時間軸を逆行しないけどね。まあ、そんなこといいから。乾杯しようよ」
「お酒飲めないんですが」
「大丈夫、これはまどろみの水って言う水だよ」
水か、水なら飲めるか。グラスを口に付けようとしたら。「それでは、討伐委員を紹介する!討伐委員は、前に出てくれ!」と、鋭い角が頭に生えている主催者?が呼んでいる。
「呼ばれましたので、いってきますね」
「ん?ああ、がんばってね!」
グラスを置き前に歩く。後ろから舌打ちと「もう少しだったのに」なんて声が聞こえた、魔王だろう。
壇上に立つと案外高く視線が怖い。俺、1対1なら普通に喋れるんだが。1対複数の場合、一人称が自分になるんだよね、しかも敬語。
「初めに、委員長を紹介する。『ディアラ・メイニー』だ。彼女は、魔王様から[緋剣]の異名を授かった程の実力者だ」
地面につきそうなくらい長い金髪。ルビーのように透き通る紅い瞳。死人のように白い肌——なんて比喩があっている。人形でもここまで美しく作れないだろう。んー、ハニートラップか、使えるな。一目散に駆け寄って来そうな勇者いるし。てか、あいつも勇者になってるのか?
「尽力します」
と、一言だけ言って下がった。無愛想な奴だ。あ、ふーん。言いたいこと全部言われた系か?もしかして?
「プッ」
ああ、だめだそう考えるとギャップが可愛くて、可愛くて。笑い堪えられないぞ!あのキリッとした声でも実は言うこと言われちゃったとか、あはは、涙出てきちゃう!
そんなこと考えてたら、ギロッて睨まれた。
「ブフッ」
図星かー!そう思っても仕方ないよね?緊張ほぐれたわこの調子でどんどん言っちゃおー!
Hollow night 〜魔王のお供始めました〜 ミツキ @mituki14
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