第5話殻に潜み、獲物を待つ

 あの後、こたつで寝たと思ったんだが、なんで魔王のとなりで寝てん?「んふふふ」とか言ってるんだけど、寝言?てかまず、魔王って寝るの?

 とりま、ベッドから出よ——


「——グハッ!」


 掴まれた。この魔王、俺を抱き枕のように掴み上がって。


「はーなーせー!はーなーせー!」


 はーなーせー!はーなーせー!抉じ開けようとしたが、こいつ力強い。


「ふっふっふー、逃げられるとでも?」


 ++++


 はぁー、酷い目にあった。あのまま、一緒に風呂入るって誰が考えるか?てか、魔王の髪洗うのめっちゃ大変だったぞ、長いわ。まあ、それはいいんだが、まさか性別まで変わるとはね。まあ、中性つまりどちらでもない性別というか、無性になってた......ばいばい、またいつか会おう。

 余談だが、さっきの拒絶は全面的ではないので魂は消えてないよ。悪しからず。ん?これだと、まんざらでもなかった。みたいに聞こえるんだか。


「気のせいだよ」

「ニヤニヤしながら言うな!」

「はいはい、着替えちゃったところ悪いんだけどこれに着替えといてね」


 黒いシャツ、腕章、ズボンにサスペンダーなどなど、なにこのセット。


「大魔王の側近セットだよ」

「ん?じゃあ、魔王城とか行くの?あっ、俺あれやりたい!あの、『フハハハハハハ!よく来たな勇者達よ』ってヤツね」

「あーアレ、私が魔王城に来たときにやったら滅茶滅茶怒られたヤツか」


 うわぁ、失敗談あんのかよ。しかも俺、声まで男勝りな女の子みたいになってるんだが。


「そうだ!君のあっちでの名前決めてなかったね。そうだねぇ、能......のう、脳、ハッ」


 おっなんか閃いた。


「君はあっちでは、『アイン』って、名乗れ」

「わかった。物理学とかダメダメだけど名乗るよ」

「え、結構捻った方なんだけど」

「だんだんあんたの考えてることがわかってきた」


 ++++


「あー、外から入るんじゃないんですか。そうですか」

「なにさ、不満な顔して」


 いやさ、あるやんなんかこう『バーーーン』みたいな効果音がするところ。外から見たほうが迫力がありそうだしさ、ね?


「後で見せてあげるから、お披露目会が終わってからね」


 お披露目会とは、俺も含めた『勇者討伐委員会』の、お披露目会。ちなみに、その為の腕章だ。全くなんでこんなめんどうなことしなきゃないかな。


「この国の王の付き添いだ。どんな奴か知りたいだろう?みんなは」

「俺はこんな、控えめに言って自由な魔王の国がちゃんと機能してるか心配ですよ」

「大丈夫さ、私はあくまでも勇者に倒される役って訳。内政にはまあり関わってないよ」


 へーこういうのって魔王がす.......ん?倒される?まさか、


「人聞きが悪いよ。生贄だなんてさ?私は、勇者を倒してこそ真の魔王、つまり大魔王だと思っている。それも含めて君を推薦したんだよ」

「自分からなった、と思っていいんだね?」

「いいよ。君には、私の持ち得る全ての記憶を観て貰いたいから」


 記憶を観る?それは、どう言う意味で?聞くか聞かぬか迷いにしたが、結局は覗かれているから同じだ。


「君のさ」

「?」

「ユニークスキル、みたいな?いつ話すか迷ったが、多少は時間があるしね?」



 記憶を観る能力か?だとすれば、かなり強いんじゃ......


「その通り名前は......『ホークアイ鷹の目』なんてどう?単純だけど別に良くない?」


 単純というよりかうなぎを紐でくくったみたいになってる。鷹、能、『能ある鷹は爪を隠す』よくこうも上手く、繋げたなぁ。


「こ、これは、き、君が私を褒めた」

「何いきなりキョドッてんの、気持ち悪い」

「えぇ、なかすぃーよ」


 お披露目会で何話そうかな?やっぱり、契約の話とかかな?俺は、魔王を裏切りません、みたいな?

 うん、後で考えよう。

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