第4話存在の証明

「どこに向かってるんですか?徒歩でつくところすか?」

「自宅というかワープホール的な物かな。一息ついたら、君の感じている違和感に答えるよ」


 そう、さっきからずっと歩きにくいし、なんだか酔う。特に怠いとかではないんだが、というかむしろ楽な方だ、絶妙な違和感がこべりつく。


「分かってるんなら早く教えてくれてもいいのに」

「そう先走らないことだよ。まあ、強いて言うなら、ってことさ」


 なるほど、いつどこで盗聴されてるかわかんないってことね。


 ++++


「さっくつろぎたまえ、まずは、コーヒー?ココア?どっちかな?」

「アイスココアで」

「寒いのによく飲めるな」


 生憎猫舌なんだ、てか、さっさと違和感の正体教えろ。こたつでぬくぬくしていると、魔王が鏡と箱を持って来た。


「んじゃ、君の違和感について話そうか、今の君は、死ぬ直前のものとは違う。今の君は、君と私に似た、いや、似せたものだ。なぜ私に似ているかは、さっき書いた契約書の力。多少は誘導したが、君の意思の方が強かったよ。誘導したのは、契約書にサインしなければ多分死んでいたよ。殺された、ではなく消滅に近い書いたときにも言ったが魂ごと消ていた」


 ならば強制的に書かせればよかったのでは?


「君もある程度は抵抗するだろ?その抵抗も魂の消滅に作用する可能性がある。まず、君は死ぬ寸前まで自分を見ないんだ。これは、非常に危険だよ。自我を保ってなきゃ、いつ壊れるか分かったもんじゃない。それに、今の君の身体はこの世界にどこにも居ない人の身体だ、この世界には、神が信じる者にしか居ない。君は信じて居ないだろ?ここでは、存在しない人間は神が輪廻に返すが、信仰していない君は、ただ無を彷徨うことになる。そこで、私の契約書だ。あの契約書は、私の力を貸すと言ったが、私の能力や見た目、性格を書き写すというものだ。ほら、見てみな」


 なるほど、そういうことか。鏡を見ると魔王を男の娘っぽくした人が写っていた。


「この絶妙違和感は、写したことによって身長や体重、体格などが変わっているからってことですね?」

「そうだよ。いやぁー理解が速くて助かるよ。まあ、要するに私のナルシスト性を書き写させたってことさ。それが1番君の存在証明になるのだ」


 分かりやすく説明すれば、魔王似になることで神が俺の存在を認めてくれて。ナルシスト性で自分自身を認めるってことだ。


「そうだ、なんで俺なんだ?お供なら他の奴にもできるはずだろ?」

「大魔王である私に意見をするから。とか、趣味が合うとか、ちゃんと私の発言を理解できるから?」

「疑問わ疑問で返すなよ。てか、どんな趣味だよ」


 あ、てかスマホに1日触れてない。新記録だわ。


「あ、はいスマホ一応取ってきといた」


 この魔王、使える!

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