第20話 最終回 妊娠?!

恐らく大学に行かなければ 白井先輩や可憐さんなど いろんな人には巡り会えなかったかも知れない


これからの人生で さまざま教訓を得て 高いハードルを超えて行くのに まだまだ経験は必要だ


いったい俺は どこに流されて行くのだろうか


時折 そんな不安にも駆られる


俺と一ノ瀬と付き合ってから1ヶ月が過ぎようとしていた


日曜日 一ノ瀬の両親が結婚式で熱海に行ってるというので お昼過ぎに 赤羽の一ノ瀬の家に向かった


ここで 俺と一ノ瀬は2年前 お互いに生まれて初めての契りを交わしたのだ


一度別れ また交際が始まり お互い気心は知っている


一ノ瀬の家の前で俺は 携帯で電話を入れた


『もしもし私 秀?』

「うん」

『待って 今ドア開けるね』


一ノ瀬の家のドアが開いた


『入って 2階の私の部屋に行ってて』


俺は 一ノ瀬に言われるように2階の一ノ瀬の部屋のドアを開けた

かわいい大きなテディべアや小さなテディべアが飾られている

いかにも女の子の部屋だ


一ノ瀬が コーラとポテトチップスを持って上がって来た


『秀 もし私に子供が出来てたら パパになってくれる?』

コーラをグラスに注ぎながら 一ノ瀬は泣きそうな声で俺に問いかけた

俺は バックから煙草を取り出すと 深い溜息を吸うように聞き返した

「え どういう意味?」

『来ないの 生理』

「いつから?」

『もう2週間も遅れてる いつも順調に来てるのに 何だか不安』


俺は 戸惑った コーラをぐっと飲むと天井を仰いだ


『調べる?』

「・・・」

『昨日 妊娠検査薬買って来たの? どうすればいい?』

「調べようよ それからだ」

『もしも陽性だったら どうすればいいの?』


何も言えなかった こんな時に 頼りにならない男だ

俺は 心に決めた


「いいよ 陽性だったら生んで 俺 パパになるから」

『ありがと 少し安心した』


そう言うと 二人は熱い抱擁を交わし キスをした


『ここにいて 今 調べて来る』

「うん」


一ノ瀬は 1階のトイレへ向かった

俺は 動揺している 激しく胸の鼓動が高まる

ほんの僅かな時間だが すごく長く感じた


一ノ瀬が妊娠検査薬をティッシュでくるんで 俺の前に持って来た


『秀 縦の線があったら 陽性だから 先見て』

「いや 一緒に見よう」

『怖い』

「大丈夫 せえので一緒に見よう」

『わかった』

「せえの』


陽性では 無かった

一ノ瀬の手が震えていた


『私 どっちでも良かった 秀がパパになるって言ってくれたから』


話こんでいたら いつのまにか夕陽が輝いていた


「一ノ瀬 飲みに行く?」

『うん』


二人は 赤羽のOK横丁に繰り出した


「乾杯 でも正直 さっき怖かったよ まじ」

『私は 少し残念だったかも ふふ』


一ノ瀬が焼き鳥を食べてる横顔が だんだん美しく最近見えるようになってきた

一ノ瀬も 知らず知らずのうちに 大人になっているんだと 初めて思えるような気がした

いつも一緒にいたから・・・ 気づかなかったのかもしれない


優しい娘だ 俺には勿体ない

俺は 久々に酔った


一ノ瀬が トイレへ行った

トイレから戻ると にこにこしていた


「どうしたの?」

『生理来た ふふ これで一安心 ね 帰ろう』

「うん」


俺と一ノ瀬は 店の外に出た

足取りは 軽やかだった


今夜の満月も 嬉しそうに笑って見えた


ーー  完  ーー

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頑張り屋秀のキャンパスライフ @izakayatikatra

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