#2 黒色

 今、僕はこの恐ろしいほどに早い奴に担がれている。

このまま行けばすぐにジャングルを抜けられそうだ。

欠点があるとすれば、バランスを崩したらすぐに落ちてしまいそうな所だ。


「もうすこし速度下げれませんかネェ…」 

「なにいってるのさ、気配を感じないのかい?後ろを見てごらん!」



 そう言われ後ろを振り向く。

後ろには倒された物とは別であろう色の違う生物がこちらを追いかけて来ている。

しかしそれは先ほどの青い生き物とは大きく異なり、黒色でかなりの大きさだ。


「なんだこレ…」

「セルリアンさ!こんなのはあの時以来だけどね…」


 呆気に取られ呟くと走ったまま僕の疑問にそう答えた。

会った時に比べ顔に余裕がなく、相当焦っているように思える。

どうやら相当緊迫した状況なのだが、実感が湧かない。


(セルリアン…なぜ聞き覚えがあル?

ボクはあの生物に襲われたはずなのに、なぜ恐怖しなイ?


なぜボクは今、この状況を楽しんでいるんダ?)



「はぁ、はぁ、このままじゃ追いつかれそうだ」


「…ボクを置いて行けばいいじゃないですカ?」

「何を言っているんだい!仲間なんだからそんな事できるわけないじゃないか!」

 

「ハ?…フフ、アハハハ!

 仲間?さっき会ったばかりのボクを仲間だっテ!?」


「そうさ!私達はみんなフレンズだからね!」



 そう答えると、ボクを運んでいる体が謎のキラキラで光を放つ。

次第にどんどんと速度を上げ、セルリアンとの距離がひらく。


 ボクを置いていけば簡単に助かる、なのになぜ一人で逃げない?

訳がわからない、わからなさ過ぎて、くだらなさ過ぎて、イライラする。



「ぐっ!だめか…」


先ほどまでとは違い、どんどんと速度が落ちていく。

そしてそのまま力尽きる様に倒れ込んでしまった。

先程までかなり離していたセルリアン達が距離を詰めてくる。


「…すまないね

 さっきのでほとんどキラキラ使い切っちゃったよ...」


「さっさと一人で逃げておけば良かったものヲ...

 本当にくだらなイ…」


 そう、見下すように悪態つく。

どうやら反論する力もないようで、力のない目でこちらを見ている。

ボクはため息を吐き、その場に立ち上がる。


「無抵抗でやられるのも嫌なんデ...」


 そう呟き、近くに落ちている棒を拾う。

少しずつ大きくなっているのか、先ほどよりも数倍多くなっているセルリアンを前にその程度で到底対抗できるはずもないのはわかっているが最後の悪あがきだ。

こちらへ猛突進してくるセルリアンに対し身構える。



その瞬間、虹色と灰色が混ざったキラキラがあたり一面を埋め尽くした。


………





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悪役と英雄 ぽっか @pocka

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