#1 不運

「オキテ…オキテ…アサダヨ」


 聞き覚えのある声で目が覚める。

頭の痛みはまだ残っているが、だいぶ落ち着いたようだ。



「…ここハどこですカ」


「ココハ「じゃんぐるちほー」ダヨ。」


 最初に思い浮かんだ疑問を問いかけると、ソレはすぐに答えた。

記憶が抜けているのか、場所を言われてもわからない。



「どこカ、開けた場所はないですカ」


「ココカラダト「アンイン橋」ガイチバンチカイネ、ソコマデアンナイスルヨ」


 そう言ってアレはピョコピョコと草木を避け、進んでいく。

後をついて行こうと足を進めるが、歩くたびにフラフラしてしまう。

止まることなく進むアレは少しずつ距離が空き、草木に隠れて見失ってしまった。


「なんなんですカ、あれハ…」



 呆れるように呟くと、見失った方へ足を進める。

追いつける気はしないが、この場所に留まるよりはマシだと思ったからだ。

そのまま進んでいくがあたりを見回しても全てが草木、道に迷わないはずがない。



「まいったナァ…」


 そう呟き、木にもたれ掛かる。

途方に暮れながらこれからどうするか、先に進むしかないが…などと考える。

すると、ガサガサと目の前の草が揺れる。


「!!」


 飛び上がるようにそちらへ身構える。

先程までいた青い物とは違う、モヤモヤと光る青い生き物。

見覚えのある生き物がそこにいた。


嫌悪感はなく、敵とは思えなかった。

手を伸ばし、触れようとするが、得体の知らない生物はこちらに飛びかかってくる。


「なんですカ、こいつハ!」


 間一髪で避け、フラフラの足を使い、全速力で走る。

襲ってきた生物もこちらを追いかけ、距離を詰めていく。



「っ!…ハァ…ハァ…」


 足がもつれ、その場に転ぶ。

わけも分からず、こんな場所で、何かもわからないやつに襲われて終わるのか…

そんな事を考えながらすぐ目の前まで来た生き物に抵抗することなくただ睨む。



一瞬だった。


 目の前の生き物が虹色の光を放ちながら、粉々になった。

何が起こったか理解ができず、呆然とする。

 

「大丈夫かい?えっとー、かばん…じゃないよね?」



 気がつくと先ほどとは違う別の生き物が眼の前に立っていた。

先ほどの生き物を粉々にしたのはコレか…



「どうモ、ボクはもう行くんデ…」

「行くって、そのフラフラした状態で奥に進むのかい?」

「…」

「道に迷ってるなら案内するけど」


 はやく離れようとしたが、どうやらジャングルの奥へ進もうとしていたようだ。

さっきの青いのよりは大丈夫そうだし、素直に案内されたほうがいいか。



「…それじゃア、お願いするヨ」


「よし、それじゃあいくよ!」

「うわァ!なんで持ち上げるんダ!」


 無理やり担がれ、連れて行かれる。

今回も大丈夫じゃなさそうだ…。



……………


………

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