山に登り、地元を愛し、地元を味わう

行ったこともないのに、まるで自分が住んでいたかのような気分になる。
音が、声が、風が、風景が、頭の中に飛び込んでくる、そんな作品。
個人的に大変感情移入してしまった。自分も山岳部で大会に向け奮闘していた過去があったからだろうか。
自分も地元で、地元の山で暑い夏の日も寒い雪の残る日も山岳部として活動してきたことを思い出す。炎天下の中で歩荷させられ、雪解けの道を何キロも走り、温泉まで行かされ…。
オーバーヒートした体を木陰にうずめ、近くの神社の水道で頭から水をかぶったり、はたまた冷え切った体で足湯に飛び込んだり。
地元の山には何度も登り、県内の多くの山も登った、いや県内の山は知り尽くしている自信があった。
大会準備では先輩や同級生に罵倒され、二度と登ってやるものかと思ったこともある。
大会は一大イベントだ。大会準備は忙しすぎて一か月間、家にいる時間よりも山にいる時間のほうが多かったときもあった。
その代わりに、大会が終わった後の達成感は何物にもかえられないものがあった。
話が長くなってしまったが、青春の時に地元を味わい、地元の山に登るというのは本当に素晴らしいことだと思う。地元から離れてしまった今、この作品を見つけそんな忘れかけていた思い出に浸っている。

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