page・3 偶像

「本当にここを出て行くのですか?」


「同じ場所にいつまでも留まり続けているのはどうも俺の性に合わねぇし…パークに住まわせてもらうからには他のちほーのフレンズ達にも挨拶しとかないとな」


「お前にしては殊勝な心掛けですね…どこのちほーに向かうつもりなのですか?」


そいつはまだ決めてなかったな…


フレンズになってから数日経ったある日、俺は他のちほーのフレンズが気になり始めたので適当にパークを飛んでまわることにした。

フレンズになりたての頃は上手く扱えなかった頭の翼だが、博士達の指導によりスピードはともかくなんとか元の感覚で飛翔できる様にはなった。だが実体を無くして透過する能力は今だ使えない


「まだフレンズの身体に慣れていないので無茶は禁物なのです。セルリアン等に遭遇しても当分は逃げに徹するですよ」


「まぁ身体に慣れてくればそのうち透過の能力も使える様になるでしょう。焦らずに行動するのです」


「ありがとな。色々と親切にしてくれて…」

俺は本心からそう伝えた


「れ、礼などいらないのです!さっさと何処へでも行ってこいです!」


「次ここに来る時は、もう少しマシな料理を振る舞うのですよ!」


「なに?照れてんの?」ニヤニヤ


「「照れてないのです!!」」


こいつらをからかうのはこれぐらいにしておくか…俺は頭から黒い翼を生やし翼を羽ばたかせ宙に浮き始める


「じゃあなチビフクロウ共」バサッ


「チビじゃないのです!」


「全く少しは敬って欲しいものです」


………

ジャパリパーク上空


博士達に聞いた話によるとフレンズってのは常に体内のサンドスターを消費しながら活動するらしい。そのサンドスターが少なくなると疲労感が増して動きが鈍くなるんだそうだ…まぁ休息をとったりすればサンドスターが供給されてある程度は回復するらしいが……

そしてそれは俺も例外じゃないから、あまり考えなしにあちこちを飛び回っていてはその内痛い目を見る事になる。早いうちにどこに行くか決めとかないと…


「…隣の水辺にでも寄ってみるか」


水辺…たしかパぺ…ぺ、ペパポだかってアイドルグループがいたちほーだったな。あとメガネかけた猫娘もいたっけか


今更こんな事言うのもなんだけど俺、こんな姿でどんな顔してあいつらの前に姿を表わせばいいんだろうなぁ……


………


みずべちほー


「確かこの控え室だったな」ス-


ガンッ


「痛っ」


壁抜けを試してみたがやっぱダメか……思いっきり扉に頭をぶつけちまった


「な、なによ今の音…あら?あなたは…」ガチャ


控え室の中から扉を開けて出てきたのはツインテの女…確かプリンセスって名前の…


「この辺じゃ見ないフレンズね…ひょっとしてこの間の噴火で生まれたのかしら?」


やっぱ初見じゃ俺とはわからないか…


「まぁ間違っちゃいないけど…正確には『生き返った』んだけどな」


「生き返った? あ、まさかあなた…」


「…そのまさかだよ」


「え、えぇぇぇぇぇ!!?」


………

控え室の中へと案内された俺は5人のペンギンアイドルグループ「ペパプ」に俺がこうなった経緯を順を追って説明する。当然ながらかなり驚かれた。


「ビックリしたぜー、あんな怖い顔した化け物がフレンズになるとこんなにも変わるもんなんだなー」


「うむ…」


「とてもスタイルが良くて…顔も可愛らしいくて素敵ですよリュークさん!」


「可愛らしいとか言わないでくれジェーン、恥ずかしくなってくるから」


「ジャパリまん食べるー?」スッ


「サンキューな」パシッ


フルルから差し出されたジャパリまんを頬張る俺。…しっかし上からこいつらを見下ろしていた時は特に何も気にならなかったけど…


「……」ジ-ッ


「? どうした?私の顔に何かついてるか?」


「いや、なんでもねぇ」


こいつらと、特にこのコウテイって女……格好が際どすぎるっつーかなんつーか……こうして同じ目線で立って見てみると正直目のやり場に困る。しかもこのコウテイ、まぁ中々のボインちゃん……


「何ジロジロと見てるのよ。ハッ、あなた……まさかペパプをそう言う目で」


「い、いや違う誤解だ誤解!!」


すげぇ剣幕でマネージャーに睨まれた…やっぱまだこいつにはかなり警戒されてるみたいだな…よっぽどペパプが大事と見える


「しっかし見直したぜリューク!命張ってセルリアンを倒して、かばん達を助けるなんてよ!今のお前最高にロックだぜ!!」


「リュークさんはパークを救った英雄ですよ!」


英雄か…そもそもそのセルリアンが生まれたのは俺が原因なんだけどな…大体俺がノートを落としたせいであいつらにあんな辛い思いを……まずい。なんか気分が沈んで来た


「英雄だなんて、俺にはそんな資格……」


「ちょ、ちょっと何暗い顔してるのよ…そうだ!丁度私達これからレッスンがあるの!せっかくだから見学していきなさいよ!いいでしょマーゲイ!」


相変わらず強引だなこのプリンセスって奴は…なんか最初に会った時もこんな事があった気が…


「ええプリンセスさんがそう言うのなら…リューク、本当はペパプのレッスンを見学するにも専用のチケットが必要なのよ。プリンセスさんに感謝しなさいね」


「は、はい」


「落ち込んだファンを元気付けるのもアイドルの役目よ!さぁ皆レッスン開始よ!」


「わかった」


「よっしゃー!」


「頑張ります!」


「ふぁーい」


だから俺はお前らのファンになった覚えは無いっつーのに……まぁいいか

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死神のフレンズ デューク @simofuki

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