意識の彼方へ

空知音

第1話


 肉体消滅後に意識はどうなるのか。


 お釈迦様は、死滅後の意識について考えるなど無駄だからやめなさいということを毒矢の例えで触れられていたと思います。つまり、毒矢が刺さったら、それがどんな矢か、どんな毒かを分析する前に、まずその毒矢を抜けというものです。

 しかし、ここは、それに従っていたら一行も書けませんから、自分の直感に従って書こうと思います。


 私の直感では、死んだ後、意識は無に帰すということになります。

 よく、臨死体験など、死後の世界をうかがわせるものについて書かれていますが、ああいったものは、脳の機能から十分起こりえると読んだことがあります。つまり、臨死体験こそ脳が作りだす幻だということです。


 人の心は弱いものです。虚無の深淵を前にしては、なかなか冷静でいられるものではありません。しかし、誰しも最期には、必ずそれに直面しなければならない。


 仏教で、死後の世界に触れることがあるのは、あくまで衆生救済のためでしょう。私は、お釈迦様の考えも、同じように、死後は無に帰すというものだと考えています。それをよく理解されているお坊様なら、(死後の世界は)あると思えばある、無いと思えばない、「色即是空、空即是色」という視点で「救い」のためにそれを利用して良いのかもしれません。


 ただし、私たちがそれを考えだすと、どうでしょう。オウム真理教の例を出すまでもなくとても危険な考えに結びつく恐れがある。

  

 二十世紀を生きた精神世界の巨人クリシュナムルティは、生から死への移りかわりを、流れる川が大海に出ていくイメージとしてとらえていました。もし、私たちが、肉体消滅後の意識について考えるなら、このイメージが一番無難でしょう。少なくとも、私自身は、これで十分安心できます。


 大いなる無への歩みを恐怖でとらえるか、感動でとらえるか、どちらにしても最期に試されるのは己自身だということになります。 


 

 

  

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意識の彼方へ 空知音 @tenchan115

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