第2話 鍛冶師は、追い出されたのだった

 「いらっしゃーい!今日はどんな御用だい?」

セルクルの中心地、そのひときわ目立つ店で一人の青年が尋ねた。髪は短く切りそろえられ、革の前掛けとグローブをはめ、上半身は使い込まれた袖の長いラフな服を身に着けている。名をオルテといい、今年で18歳の青年である。

「俺の得物が真っ二つに折れちまってな。新しいのを買いに来たんだが、ちょうど良さそうなのはないか?」

相手は、筋骨隆々の男だ。

「ああ、それなら、この間父が魔術回路を通した大剣を作っていたので、ちょっと読んできます。」

「ああ、頼んだ」


 奥の工房まで入っていくと、ソルトが大剣の表面に魔術回路を彫り込んでいるところだった。この作業、魔法を使わないととてもできたものではないのだが、ソルトはいとも簡単にその魔法を操る。

「おいオルテ、外で客待たせてんだろ。一体何しに来たんだ」

「ナクトさんが例の大剣を真っ二つに折っちゃったらしくてさ、新しいのを注文されたんだけど、ナクトさんが使っても耐えられそうなのってそれしかなさそうだからこっちまで来た」

「で、お前はこれをどうしたいんだ?」

「え?もちろん売るにきまってるだろう?信頼が第一だって、親父がいつもいってるんじゃないか。」

「これは俺の研究用だ。売るわけがない。そもそも、お前が作ったものを売るならまだしも、俺の作ったものを売ろうというその魂胆が気に食わん。決めた、お前は今日からしばらく家に帰ってくるな!腕を上げてから帰ってこい!」

そう怒鳴ると、ソルトはナクトさんの相手をしにカウンターまで出て行った。結局は売るらしい。オルテは理不尽だと思う反面、これからが楽しみで仕方がなかった。

(ソルトが言うことは明らかに俺を旅に出させるためのいいがかりのような気がするけど、世界を旅して回れるのは魅力的だ。今まで一度もこの町の外を見たことがないし、この機会を逃すわけにはいかない!)

そう思うが否や、☆はすぐさま旅の準備を始める。愛用の鍛冶道具一式に、約二週間分の食料。その他、最低限必需品などだ。


 「では、行ってまいります!」

店の前で元気よく声を張り上げる。今から夢にまでみた一人旅の始まりだ。自然と声も大きくなる。

「お、おいちょっとまて」

「なんですかお父さん」

「呼び方まで変わってんのかよ、気持ち悪ぃなぁ。ほら、これ持ってけ」

そういって、ソルトは小型の腕時計のようなものを手渡してきた。これは...ソルトが昔使っていたという携帯型の炉じゃないか。

「ずいぶんと古いが、使えないわけじゃない。大事に使え」

「わかりました、ありがとうお父さん!」

「だから気持ち悪いからその呼び方はやめろ」

こうして、俺の旅がはじまったのだった。


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今はまだおとなしめですが、これからはっちゃけていく予定です。三人称視点と一人称視点が混ざっていますが、読みにくいという声があれば改善するかもしれません。

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救世主は、鍛冶師だった 骸晶 @higure

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