少年エロティシズム 三十と一夜の短篇 第25回

白川津 中々

第1話

 エロビデオが欲しかった。

 兄が引越し、俺の部屋にデッキが来た。となれば、エロビデオは必須ではないか。

 だが、店舗で購入するにはリスクが高すぎる。18禁ののれんが、ベルリンの壁のように立ちふさがるのだ。これを突破するのは容易ではないし、さらに商品をレジに持ち込み購入するとなると、その難易度アルパインスタイルでのエベレスト踏破に匹敵する。はっきりいって不可能に近い。現に先日、友人の前堂が早まって挑戦した結果死んでしまった(社会的に)。いい奴ほど早く死んでいく……


 なので俺は通販を利用する事にした。河原で拾ったエロ本の最後に注文用のハガキが付いていたのだ(雨ざらしで使用するには難があったが、キープしておいてよかった!)。これを利用しない手はない。

 すまんな前堂。あの世で詫びるてやるから許してほしい。


 宛先。名前。タイトル(姫百合のアヴァンチュール。夏の処女航海)を記入し投函。入金完了。到着は一週間後。よし! これで念願のエロビデオを手に入れる事ができるぞ! 果報は寝て待て! さぁ、寝よう!






 だが、俺はエロビデオの映像をこの目で見る事は叶わなかった。



「健! ちょっと来なさい!」


 ハガキを投函した翌日。俺は帰宅するなり母親に呼び出されたのだった。はて、何かなと思って顔を出して見ると、そこには鬼の形相をした母が、昨日投函したはずのハガキを持って立っていたのだった。



 なぜ投函したハガキがここにあるのか。答えは明白だった。送り先の住所が滲み読み取る事ができなかったのだ。


 二時間にも及ぶ説教の中で俺は涙を流した。それは母の言葉が堪えたわけでも、前堂に対して贖罪の気持ちがあったからでもない。ただ、エロビデオが来ないという事実が、俺に涙を落とさせたのだった。


 その後ビデオデッキが没取されたのはいうまでもない。

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