第2話 「職員室」

その日は4時間授業だったためにもう下校時間がやってきた。

「帰ろーぜ」

チャイムと同時に話しかけてきたのは眼鏡をかけた男の子、トオルだ。

「おう、帰ろーぜ」

2人は揃って下駄箱へ向かって歩いて行く。

「あ、そうだ、部活どうすんの?陸部ないけど。」

「んーまだなんも決めてねえよ、入るかもわかんねえ」

トオルからの質問にダラダラとした口調で翔は返事をしながら、同時に朝見かけたラダー少女を思い出す。

「ん〜やっぱ陸上やりたいなあ、なんとかなんねーのかな」

翔はやっぱり陸上を諦めきれずにいた。いっそのことおれが作ってしまえば…


「なあトオル、前に陸上やりたいみたいなこと言ってなかったか?」

「ん?ああ、言ったかもね。何かしら運動したかったから陸上が1番始めやすいかなって」

「じゃあさ、俺らで作らねーか?陸部」

「え、マジ?」

「うん、マジ!」

翔の提案に少し驚きを見せたトオルであったが、なんだかワクワクした様子であった。

「あり…かも。」

「っし、じゃあ早速先生のとこ行って話してこよーぜ!」

「え!今から?流石に早すぎない?!」

「何言ってんだよ、ほら、行くぞ」

ほぼ強制と言っていいくらい、強引にトオルの手を引っ張り職員室に向かう。


「失礼します!1年の中島翔です!田中先生はいらっしゃいますか?」

田中先生とは、翔とトオルの担任の先生だ。

「田中先生は今、転校生とお話ししてるよ〜」

眼鏡をかけた教頭先生らしき男の先生が答えた。

「転校生??」

2人は顔を見合わせ、失礼しますと言いながら職員室を進んで行く。そして、田中先生の机のところにたどり着いた途端、翔は大きく目を見開いた。

え、どうして君がここに…??


そこには、今朝見かけたラダー少女がいたのであった。


「あら、どうしたの?あ、そうそうこの子、来週からうちのクラスになる早川すずさん。仲良くしてあげてね。」

田中先生はニコニコしながら彼女を紹介した。

翔は開いた口が塞がらなかった。

漫画じゃあるまいし、こんな奇跡ねえだろ…






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獣の王者 高志 @shaka6birgo

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