第1話 「朝のランニングで」

「翔〜!起きなさーい!あんた、日直だって言ってなかったー?」


朝の7時30分。お母さんの叫び声と同時に目を覚まし、時計を見て愕然とする。

翔は新学期早々、本日の日直の担当になってしまい、朝早くから学校に行って準備をしなければならなかった。

「やべー意外と間に合わねーかも。」

8時までには学校に着いていないと、日直の仕事は間に合わない。翔は急いで朝ごはんのパンを牛乳と一緒に飲み込み、制服に着替えて素早く家を出て行った。

「行ってらっしゃーい、気をつけるんだよー!」

母の大きな叫び声が翔の耳を通り過ぎる。


……


少し歩いてから翔は間に合わないんじゃないか焦り始めた。「しょーがねえ、走るか」

翔はそう思って通学路の途中にある土手にて少し走り出した。

「やっぱ気持ちーなー、いい気分だぜ」

翔は走るのが久しぶりだった。 朝の涼しい風が翔の髪をかきわけていく。


「ん??」


その時だった。ふと土手の下の方に目をやると、同い年と思える女の子が何やら激しく動いている。翔は目を凝らし何をしているのかをよく見た。

その女の子はラダーを使って足を素早く刻み、すぐに切り替えてダッシュをした。


「あ、あの子きっと陸上やってるんだ…」


翔は長い間陸上の練習どころか走ることすらやっていない。ラダーなんて超久しぶりに見たのであった。

だから、その女の子を見ていると背中がゾクゾクしてきた。

「どうしよう、おれも混ぜてもらえないかな…」

翔は土手を降りて話しかけようか迷っていた。

が、しかし「日直」であることを瞬時に思い出した翔は時計を見て焦りだし、今度は本気で走って学校に向かった。

「今度こそは話しかけてみよう…!」

そう決意した翔であった。







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