獣の王者

高志

第0話 「陸上部がない」

「え!ここって陸上部無くなったの?!」


風が吹いて桜が散っていく中、今日から高校一年生になる翔は新入生歓迎会で配られた部活動紹介パンフを眺めるとさっそく絶望した。今ではどの学校にも大抵ある陸上部も、この学校では人数の関係でちょうど今年から廃部になったらしい。入試が終わった後のストレス発散で春休み毎日遊びまくっていた翔はこのことに気付きもしなかった。

「まじか〜、信じられないな〜」

深くため息をついていると、後ろから覗くようにしてメガネをかけた男子が話しかけてきた。

「それな〜おれも高校から陸上始めようと思ってたのになーがっかり。」

翔の顔をチラッとみると、クスッと笑ってから翔の目の前に立った。

「君も陸上部入りたかったんだ。」

「ん、まーね。中学じゃずっと美術部でさ、そろそろ運動しないとまずいかなってね。」

なんだこいつ、ダイエット目的で入ろうとしてたのかよなんて思いつつ、とりあえず自己紹介をしてみようと思った。

「俺は翔。中島翔。これからよろしくね。」

「こちらこそ。僕は松永徹。トオルでいいよ」


4時間目のチャイムが鳴り、生徒たちが一斉に校舎から出た。帰宅する者、寄り道する者、そして部活動見学に向かう者。お目当ての陸上部が無い翔は他に見学したい部活などなく、まっすぐ家へ向かって歩いて行った。


俺はこれからどうしようかな……


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