第24話 生徒会役員たち
日が段々と西の方に進むにつれてお昼時だと知らせる。
耳に入る音はペンを走らせる音と数人の息づかい、それと時々ため息だけが聞こえてくる。
別段しゃべる必要もないのだが、あまりの静けさに多少だが違和感を感じてしまう。
いつもなら岬さんや青森の声が聞こえているのだが、と言ってもそれは昼休みの話なのだが。
「……………」
現在いる場所は図書室から出て二階に行き左に進んだ一番奥の生徒会室と書かれた看板の部屋である。
そこに入るとまず目に入るのは長めのテーブルが縦に椅子が五つ並べてあり、その奥には少し大きめの机と椅子が置いてあった。
因にだが俺は長めのテーブルの一番奥の左側に座っていてその隣には岬さん、前に青森、その横に西浦、最後に俺側の列の最後に矢代先輩と言う位置付けである。
「……はぁ。何であの人は」
矢代がいきなりため息をつき呟いた。
矢代は先ほどから何度もため息をついては「あの人は」と言ってまたため息をついていた。
何故、矢代がため息をつくのか。それは……本の一時間前まではいたはずの生徒会長が消えたからである。
生徒会長はトイレに行くと言って部屋を出ていったが、トイレにいってからもう既に一時間は経過していた。
流石にトイレと言っても長すぎる気がする。と言うか、明らかに長い。そしてそこから大体の予想はつく。
つまり……あの生徒会長様はこの場から逃げたわけだ。
「……ねぇ、萩本君。会長って何処に言ったんだろうね?」
横に座っている岬さんが顔を耳元に近づけて小声でボソボソと問い掛けてきた。
近い!近い!岬さん、近いから!後耳くすぐったいから。そう言うことするから勘違い男が出てくるんですよ。
「岬さんちょっと離れてくれ。それと会長だけど……まぁ、十中八九逃げたんだろうな。」
それ以外考えられないだろ。
それに俺が会長の立場なら逃げた理由もわからないでもない。今目の前にある、山積みの資料を見れば誰だって逃げる。なんなら俺だって逃げたい。
「貴方は逃がさないわよ?」
ちょっと~青森さん?何で俺の考えることがわかるのかな?エスパーなの、そうなの?俺の周りの人間は皆エスパータイプなの?
「……違うわよ?」
おい、ちょっと待て。何で考えてることが分かるんだよ。恐いんですけど、マジで。
ストーカーですかってレベルで恐いんですけど。
「と言うか、手を動かしなさい。岬さんも萩本君も。」
「でも、もう三時間はこの資料の整理してるんだよ?少しぐらい休憩を挟もうよ。」
それは俺も賛成だ。
さっきから集中力が切れて何書いてるかわからなくなってきてたし、岬さんや西浦は頭を抱えて悩んできちゃってるし。
そもそも人間の集中力なんてずっと続くもんじゃない。精々、一時間が限界だろ。それに会社や学校でも一時間ずっと働いてる奴や勉強してる奴なんていない。会社なら合間合間に休憩を挟んだり学校なら、五分休みときちんと休みがある。
つまりだ。俺達が休みを入れるのは間違ってない。
「下手に続けるよりも少しぐらい休みを入れた方がいいんじゃねぇのか?集中力も切れて来てるしな」
「……そうね。確かに岬さんの言うことにも一理あるわ。」
青森は納得したように頷くと矢代の方に近づき先ほど話した内容を伝えに言った。青森がさっきの事を伝えると矢代は頷いて了承してくれた。
「すまないな、行きなりつれてきて、手伝わせてしまって」
入り口の横にあるポットからお湯を急須にいれながら矢代は俺たちに謝ってきた。
「……ま、でも。私は別に嫌じゃないですよ?こう言う、みんなで何かするのは嫌いじゃないですし。」
ニカッと笑いながら岬はそう言うとそれに頷くように青森も同意した。
最初はあまり乗り気ではなかった青森も悪くないとでも言いたげでこちらに目を向けてくる。
「……いや、俺はこう言うの嫌いですけどね?」
「何でそういうことを平気で言うかな?」
西浦が眉間に手を当てて哀れむように目を向けてくる。
『いや、だってみんなでワイワイするのとか嫌いだし?俺、素直だから。つい、思ったことを口に出しちゃうんだよね?』
と、言いたかったが。……なんか凄く嫌な目線を向けてくる人物がいたせいでその言葉は喉の奥で止まってしまった。
「……協調性を少し知った方がいいわよ?無神経君。」
「強調性?ナニソレ、強引に周りを巻き込むって言う意味ですかね?」
笑顔とともに爪先を思いっきり踏まれ、声をあげかけて瞬間、矢代が先程お茶と一緒に出してきたエクレアを口に突っ込まれた。
「グボォ!!?な、何いきなりエクレアを人のくちにつっこんでんだよ!?バカなの?殺す気なの?死んじゃってもいいんですかね?」
「フフ」と笑って青森は親指を首元に持ってきて横一線に降った。
おう、こいつ口に出さずに行動で示して来やがった。これが所謂、口じゃなく行動で示すと言うとこなのか!
「ちょっと、また二人で楽しそうに会話してないでよ!!?私も混ぜてよ!」
ホホウ、岬さんはこれが楽しそうに会話しているように見えるのか。成る程……。お前ら人間じゃねえ!
「良いわよ?岬さんもあの無神経、難聴に嫌みを言いましょ?一緒にね?」
「うん!!」
いや、ウンじゃないからね?何で頷いてるんですかね?止めてね。
「……お取り混み中悪いが、一ついいかな?」
ソシャゲから始まる青春ラブコメはどうもおかしい。 フクロウ @DSJk213
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★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
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