第23話 四人揃って……何?

「お~い、萩本くん?大丈夫。」


「岬さん、そんな男放っておきなさい。」


 俺が床に倒れてから約5分がたった。その間ずっと岬さんと西浦が俺に話しかけていた。


「……宇治村先生、本当にあいつは大丈夫なのか?」


「あいつは元々こんな奴だ。気にするだけ無駄だろう。」


「それは、それで問題なのではないのか?」


 宇治村の当たり前のような表情と言葉に矢代は少し困惑したような表情をして苦笑いを浮かべた。


「すいません、宇治村先生ちょっとよろしいでしょうか?」


 宇治村と矢代が苦笑いを浮かべているといつの間にか青森と岬が横に立っていた。


「どうした、青森?」


「萩本くんの件はわかりました、しかし一ついいでしょうか?何故、私と西浦君まで呼ばれたのですか?」


「うむ、その質問に答える前に一ついいか?岬お前はどうするんだ?」


 西浦と俺以外の全員が一斉に岬の方に視線を向けた。


「……私も。」


「……………」


「いや、私は生徒会に入ります!でもこれは萩本くんが入ったからとかじゃなくて私が、私がやりたいからです!」


 岬が放った言葉はきっと誰が聞いても真っ直ぐにその気持ちが聞こえるだろう。それほどに岬の声音は真っ直ぐで裏表がなかった。


「わかった。それで青森、先程の質問だがな……本当は気づいているのだろ?呼ばれた理由を。」


「………私は超能力者ではないですし、未来が見えるわけでもない。けれど、宇治村先生の言いたいことは大体わかりました。」


 そういうと青森は一度宇治村から視線を外し俺の側にいる西浦の方に視線を向けた。


「西浦くん、そんな男放っておいてちょっとこっちに来てもらってもいいかしら?」


「え?……わ、わかった。」


 西浦はその言葉を聞くと直ぐに青森の方に歩いていった。


「で、宇治村先生先程の続きですが。宇治村先生が言いたいのはきっと……私達も生徒会に入らないか、と言うことですよね?」


「……ああ、そうだ。だがな、西浦、青森お前達に関しては生徒会に入ることを強制はしない。そもそも、お前たちはそこまで成績や態度が悪いわけではないからな。」


「……僕はやろうかな。生徒会を。」


 最初に話始めたのは西浦だった。


「ほら、僕って学校に来はじめたのも最近だし……それに僕は萩本くん達ともっと何かしたい。きっと君達といたら僕はもっと変われるから。」


「……西浦くん、一つだけ言わせてもらうわね。あの男も同じことを言うと思うのだけど、結局自分を変えるのは自分よ。」


 青森は一瞬俺の方を向き少し嫌そうな顔をして直ぐに西浦の方に目線を戻した。


「だから、貴方が変われたるのは私達のおかげじゃないわ。それだけは覚えておいてね。」


「……うん。」


「で、お前はどうするんだ?青森」


 俺は床から立ち上がり青森の方に視線を向けた。

 後、お前さっき一瞬嫌そうな顔をしてこっち見ただろ。後で覚えとけよ。


「あら、死んでなかったのね?」


「勝手に殺すなよな。まぁ、一瞬だけど三途の川が見えたけど……」


「見えたんだ!!?」


 岬さん、うるさい。誰だって妹にあんなこと言われたら三途の川が見えるだろ、普通は。


「そんな事よりもお前だよ、青森?生徒会に入るのかよ。」


「そうね、私は別にはいる理由がある訳じゃないしね。」


 そう言って迷っているような表情をして青森は俺や岬さんたちの方を見た。

 しかし、そんな中岬さんは涙目になりながら上目遣いで青森の方を見ていた。


「……はぁ、私も入るわよ。だから岬さんそんな顔でこっちをみないでもらえるかしら。」


 いや、ちょっと待ってくださいよ青森さん?なかんかさ、岬さんに甘くないですかね?


「……それにあの子にお願いされてるしね。」


「なにか言った?」


 小声で何かを呟いた青森に岬さんが不思議そうに反応を返した。


「いえ、何でもないわ。」


「うん?それならいいけど。」


「ところで、宇治村先生私達が生徒会に入るのはいいですけど誰がどの役職をするのか決まってるのですか?」


 それは俺も気になるな。まぁ、ここにいる矢代先輩が副会長で後は適当に決めるって感じだろうけどな。


「ああ、それに関しては」


「私が話してやろう。」


 いきなり図書室の扉が開き一人の少女が入ってきた。


「……何で来たんですか。」


「はは、そんな反応をするな矢代。」


 矢代が困り果てた表情をして少女の方に歩いていった。


「自己紹介ぐらいは自分でちゃんとしてくださいね。」


「わかってる、わかってる。じゃあ、一年生たちも知ってると思うが。」


少女は一回深呼吸をすると少し大きな声を出して自己紹介を始めた。


「私は生徒会、会長の城ヶ崎深雪だ!」


「いや、知らんし。」


 その言葉を放った瞬間、俺の頭部に痛みが走った。


「バカ!萩本君はもう少し周りに興味を持ったろうがいいよ!」


 俺の頭部を岬さんが平手で叩いていた。

 いや、その前に叩くのはやめてね。パワハラはよくないと思うよ。


「……はは!矢代、こいつは本当に面白いな!まさかこの学校に私を知らない奴がいたなんてな!」


「会長、あまり笑わないでください。」


「萩本と言ったか、そこの男は。私は決めたぞ、お前を生徒会の副会長に命ずる!」


 唐突にそう言い放った城ヶ崎の言葉にそこにいた俺と城ヶ崎以外の全員が声を揃えて同じ言葉を放った。


「「「「「いや、それはダメだろ?」」」」」


「お前ら全員失礼すぎるだろ?」


 こうして、俺のめんどくさい学校生活がさらにめんどくさくなって行くのであった。

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