気持ち悪さがあっちむいてほい

飛び出した部屋が、景色がぐるぐると回る。

ずるいじゃない、だってそこは私のお城。

そこは私のベッドで、裸でぼんやりする君の隣、そこは私の居場所のはずで。

目の前にあったのは能面みたいな君の顔じゃなかったはず。

もっと隠して、巧妙な嘘ついてよ、あっさりと白状するなんて、そんなのずるいじゃない。あっちむいてほいしろよ。私じゃなく、君がしろよ。


派手な街並みが私を襲う。思わず階段を駆け上がって足が空回り。派手に転んでも見て向ぬふりは当たり前で、こんなぐちゃぐちゃ、誰も助けやしない。

お気に入りのヒールは折れてバックの中身から君がくれた口紅がポロリ。頭の中の白黒の思い出は口紅と一緒で、私のように転がり落ちて、消えてなくなる。

言いたいことなんてないよ。ただ聞きたい。

私のこと本当に愛してた?


パチパチ光る電灯と一緒に君の為の全てが消えていく。崩れていく。破裂して、壁に飛び散って、それからもう一度消えてく。全部、全部、放り投げて、押し付けて、のしつけて。それでもまだ足りなくて。

なんで泣かないの?なんで泣けないの?知ってたから、知りたいと思っていたから、そうだったら別れられるって思っていたから?

本当に好きで、大事で、想像よりずっと大切に思ってた。自分でも知らないうちに君の肩を借りて寄っかかってたって今更気付いたの?

忘れたいのに、忘れちゃいけないって体が反発する。君の為に泣けない理由を私は知ってる。


なんで、こっちむかないの?

笑わないで、その顔が嘘みたい。

全部冗談だったって言ってよ。その顔でこっち向くな。


あっちむけよ、あっちむいてほい。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

あの日々とさよならとでんぐり返し 木目野ダルマ @mokumeno-daruma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ