少年キート

魔法は、この世界の平均を保ち、また、人間たちに多大な幸福を与えている。

しかし、この少年は、こんなに幼いにも限らず、私と同じように気付いているらしい。

魔法は、こそが人間の敵だと。

魔法は、対魔物用の攻撃手段であって、人と人が争うために使われるべきではない。

しかし、人間は力を求め、その力は魔法となる。

次第に魔法は、魔物よりも人を殺す用の攻撃手段としても使われるようになった。

人間は魔法や魔力を、自分達の私利私欲のために使う、それはもう魔物と代わらない。魔物=人間はここで成立する。

だからこそ、魔法はこの世界に存在してはいけないのだ。では、何故お前は、魔法を使っているかって?

それは簡単だ。

私は魔法を使って、魔法を終わらす。

魔法を使うもの全員は、多分だが同じ目的を持っている。

それは、ある魔法を見つけることだ。

それは、願いを必ず叶えれる魔法。

それは、世界をも変えることができる魔法。

そう、それこそが魔法をこの世界から無くせる、唯一の魔法だよ。

そう話したのは、この少年に、キートに落ち着かせたあとだった。

キートはずっと探していた希望がやっとのことで見つかったかのような、明るい表情をしていた。さっきまでの絶望を見たときの顔と比べるとより変化が分かりやすい。

それから少しずつだがキートと私の仲は縮まったかのようにも感じた。

そして、私はキートの事を彼自信に聞いてみることにした。これも私の勝手な興味からきたものだ、無理はするなと言ったが、キートは私に話してくれた、そしてその時に知ったのだ。

キートの両親の事を、それから今までのキートの事を。キートはずっと一人だった。

いきなり両親を殺されて、そこから逃げ去った自分に嫌気が差したようだ。

私は話の途中で泣き出した、キートを抱きしめて、慰める。


「お前は、何も悪くない、悪いのはこの世界と、この魔法なんだから」


そう、魔法を手に入れたからこそ、人間は簡単に悪人へと変わる、こんな強大な力だからこそ自分を過信して、他の、回りの人々を力でねじ伏せようとする。

だからこそ、魔法は無くなった方が良い。

もちろん、新しい世界には争い事など起こらない様に作り上げる。

これが、私と、キートの生きる意味だった。

そこから、私は勢いでキートを家に連れていき、一緒に暮らすことにした。

そして、私はキートの弟子になり、魔法や体術を教えたりした。

そして、今に至る。

キートの攻撃魔法は光属性、魔法陣の空間移動で私の背中に当てようとしているのだろう。

それじゃ、私はそれから身を守る。

手に取った黒い球体は、薄い板状に変形させて、背中に配置した。

何十本もの光の槍が魔法陣から出現するが、背中にある黒い板は、ぶつかっても形状を変えず、無傷のままにいた。

瞬間的に行ったことだ、キートは私への驚きを隠せずにいる。

そして、私はこれまでに育ったキートに嬉しさと面白さを込めてこう言った。


「魔法だよ、ま、ほ、う」

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この世界は間違っている! 高本マサレ @gushitomoki

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