イリシアの目の前

そこには、不思議そうな顔を浮かべている少年が、私を凝視していた。

彼の名はキート。一応私の弟子だ。

初めてこいつと会ったのは、ある狐の嫁入り、いわゆる天気雨の日だった。

私は、出張というなの長旅から帰ってきたこともあり、少しふらふらとしていた。

すると、ポツポツと頭に何か水のような物が当たり、じきに、その感覚は冷たさと変わった。

雨だ。

空を見るとそこには、美しい光景が浮かんでいた。空から落ちる水滴が、太陽の光に照らされて、光を何倍もの明るさへと変換する。

まるで、魔法だよ。そう思い、私は雨に濡れないようにと魔法を使った。


「風の精霊よ、我を守りたまえ、エアーシールド」


空気中の期待が塊となって、私の頭の上で止まる。その塊は、水を弾き傘の働きを見せてくれる。

とても便利な魔法だ。


そのまま風景を楽しみながら、帰り道を進んでいくと、壁に持たれて、座っている少年にあった。

びしょ濡れのまま、しかし誰かを待っているのでもなく、まるでわざと濡れているかのように、その場に座り込んでいて。

この少年こそが、キートである。

そいつは、ものすごく痩せ細っていた。見た目で判断すると、とても貧弱そうとしか言えなく、まるで、命を吸いとられたような姿だった。だが、そいつのある部分は、しっかりと命を持ち、そして、誰よりも恐ろしく、凛々しかった、それは目だ。

彼の目は、私を見ていた。

まるで、これから人を殺すかのような、よくある話だ。家族を無くし、家を無くした少年少女達が、通り人を襲い、金を奪う、そして生きる。これはなんとも醜いサイクルとしか言いようがない。この私にだって止められやしない。

私は興味からか、その少年に話しかけた。


「少年よ、寒くはないのか?」


少年は、コクンと、小さくうなずく。

それを見て、彼を哀れんだ私は、彼に私と同じ魔法を使おうとした。

すると、詠唱を始めたとたんに、おとなしそうに座っていた彼はいきなり立ち上がって、こちらを殴りかかろうと、全力疾走してきた。

だが、痩せ細った足だからだろうか、全く早いとも言えない。だが、彼の殺気は本物だった。

私は、彼の拳を避けて、背中を蹴る。

少年は勢いよく地面に横たわる。

私はこの時から、この少年に、キートに興味を抱いていたのだろうか。そのまま、私は彼にこう問いかけた。


「何故、私に攻撃を向けたのだ?」


少年は、こちらにより強い殺気を向けてくる。

私は冷静にさせるために、相手を落ち着かせる。


「別に怒っている訳ではない、ただ、理由が知りたいだけだ」


すると、少年の重たそうな口が開き、その声が、私の疑問に答えてくれた。

そして、その答えが、彼の考えが私を……


「魔法を使おうとしたからだ、俺は魔法も、魔法を使う人も皆殺す!」


興奮させるのだった。

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