鬼GOKKO

猫峰しゅん

第1話


眩しさは視野を狭くする

高野

簡易的なステージの上、僕はスタンドマイクの前、目前には無数の人達が自分を見上げている

歌い出そうとした、その時、ステージの左側の建物が爆破した

十階建ての真ん中あたりから、爆破の閃光とドス黒い煙が客席の方へ降り注いだ

「チョロチョロチョロチョロ…」

爆破後とはかけ離れた音が、辺りに広がり止まない


うなだれていた顔を上げると、左手の噴水から「チョロチョロ…」とオブジェをつたって水が流れ落ち続けていた

うたた寝をしていたようだ

白の四角いテーブルの上には、食べ終えたバーガーの紙がクシャクシャに丸められ、トレーに乗っている

平日の昼時とはいえ、フードコート内の人は疎らだ

中央に設置されている噴水のせせらぎが、空席分の場を盛り上げようとしているようで煩わしく、本来の和みを感じられない

だいぶ疲れていた


テーブルに置いていたスマホに目を向ける

ここに来てから一時間は過ぎている

待ち合わせ時間からは、三十分過ぎていた

紙コップに挿しているストローを掻き回してみる

氷と氷がぶつかり合う音が鈍く、余計に時間の経過を感じさせ、苛立ちが募り出す


夢の断片が頭をよぎる

大きくため息を吐いてみせた

あれが「半分、本当」だから、夢というよりは記憶に近い

ストローに口をつけ、残りを一気に飲み干した

とても薄い

ほのかに香るオレンジ

現実味とは、こんなにも下らない


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鬼GOKKO 猫峰しゅん @kiseki-67

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る