第7話 Nishi-Azabu 3:26
エントランスの係員に挨拶して通りに出たアラタとユウは、腰の高さでお互いの手のひらをパシンと合わせた。
アラタ「良かったな」
ユウ「サイコーだった」
アラタ「今夜が肯定された気がするわ」
ユウは六本木通りに出ると、歩道と車道を隔てるガードレールの上にヒョイっと跳び乗った。
そしてバランスを取りながら六本木の方向に向けて、ガードレールの上を進んでいった。
街灯の下に入ると、ユウの頭頂部と肩が明るく照らされて、暗闇の中に白く光った。
アラタ「そっち行く?」
ユウ「いや、わかんね」
ユウはそう言ってガードレールから跳び下りた。
アラタ「帰るんならこっちっしょ」
そう言ってアラタは背後の渋谷方面を親指で軽く指さした。
そしてすぐにポケットに手を突っ込んでバイブするスマホを取り出し、画面の表示を確かめた。
アラタ「あ、トモコから電話来た。すげぇタイミング」
ユウ「この時間、人動くからねー」
アラタ「あいよ」
トモコ「アラタくん、今どこいる?」
アラタ「どこ? 六本木」
トモコ「マジで?! 六本木のどこ? お店?」
アラタ「いや、なんか路上?」
トモコ「マジで! じゃあさ、ちょっと私ら今”キャメル”の前にいるから合流しようよ」
アラタ「なんだよ。いい男いなかったの?」
トモコ「いやー、ヒドいね。ヒドい」
アラタ「キャメなんか行くからだろ。まぁいいけど。そしたらこっち来なよ。5分ぐらいだから」
トモコ「どっち? どっち行けばいいの?」
アラタ「六本木じゃないほう。渋谷のほう。って言ってわかる?」
トモコ「わかるわけないじゃん」
アラタ「そりゃそーだ。今キャメルから出たとこにいんの? そうすると、左前のほうに六本木ヒルズが見えるっしょ。うん。それと逆。右に行く。うん、大通り沿い。そっちにいるから」
アラタ「トモコたち来るってよ」
ユウ「あ、そう。二人?」
アラタ「うん、二人」
ほとんど待つまでもなく、トモコたちはすぐに現れた。
アラタとユウの姿を見るとすぐに、トモコは不満げに口をとがらせた。
トモコ「どっかお店入ってるんじゃないの?」
アラタ「いや、路上って言ったじゃん」
トモコ「わざわざこっち来てっていうから、なんかお店があるのかと思ったのに」
アラタ「いや、俺らこっちに歩くから」
トモコ「あ、そうなんだ。こっち渋谷なの?」
トモコの不満げな表情はすぐに消えた。
トモコは自分が納得さえすれば、いちいち感情を引きずらない。
アラタ「そうそう、とりあえずそっち行こうかと思って。ミキちゃん、久しぶり」
ミキ「久しぶりー」
アラタ「こいつ、ユウ。中学の同級生。トモコとは一回会ってる」
ユウ「ども」
ミキ「よろしくー」
ユウがミキに何か話しかけて、二人で並んで歩き始めた。
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