人狼ゲーム
みぞくち そうた
ファーストゲーム
人狼ゲームという言葉を聞いた事のある人が多いと思う。大人数で集まって役職を決め市民が全員狼に喰い殺されるか市民が人狼を先に殺すかのパーティーゲームだ。僕等6人はその人狼ゲームが好きで知人を集めては和気あいあいと楽しんでいた。あの日が来るまでは…。
「勇悟おはよ!今日は人狼ゲームやる?」
僕の友人の中で最も元気のある穂華だ。同じ大学で学科やクラスは一緒なのだが最初は話す事も無かったが人狼ゲームを通して仲良くなり日常でも話す様になり2人で遊びに行く事もあって密かに付き合っているんじゃないかと噂になっているのが少し気恥ずかしいが嫌ではない。彼女に好意が無いと言えばそれは嘘になってしまうからだ。
「そうしよっか。皆に連絡して…」
「おい!勇悟!これ見てみろよ!」
いきなり話掛けてきたのは僕の高校時代からの付き合いで親友と言っても過言でない大輝だ。彼は無駄に声が大きいが友達思いで良い奴だ。僕は大輝が持ってきた新聞に目を向ける。普段新聞なんて読まない奴だからなにか特ダネでも見つけたのだろうか。彼が指さす記事には人狼ゲーム好きな方募集という文字の下に電話番号が書かれていた。
「俺ら3人も電話してみないか?なんか楽しそうじゃんか!」
「えー、でもなんか怪しく無い?ね、勇悟?」
確かに怪しいが人狼ゲームは好きなので不安と好奇心で揺れたが好奇心が勝った。携帯を取り出して記載されている電話番号に掛けた。呼び出し音が2、3回鳴った後女性の声で応答があった。
「お電話ありがとうございます。人狼ゲーム開催委員会の者です。参加希望の方での登録でよろしかったですか?」
「はい、3人で登録したいのですが…」
「かしこまりました。では、三名様のお名前を伺ってもよろしいですか?本名又はニックネームでも構いません」
「勇悟、穂華、大輝です」
「かしこまりました。では、後日お手紙を送らせて頂きます。そちらに開場の日時が記載されておりますのでご確認になってご来場下さい」
僕は登録が済んだ事を伝えるとちょうど講義開始の合図がなった。穂華も大輝も自分の席に戻り講義の準備をしていた。最初は胡散臭く不安だったが内心僕はわくわくしていた。新聞に記載されているという事は日本の大半の人が見ているという事になる。どんな人に会えてどんな風にゲームを展開していくのかなとか考えている内に一日が終わってしまった。次の日にポストを見ると新聞の下に黒い封筒が入っていて裏を見ると人狼ゲーム開催委員会からだった。片隅には狼のマークが印刷されていて凄く凝った作りだった。中身を早く見たかったが焦る気持ちを抑えて大学に向かった。学校に着くと穂華と大輝が目を輝かせて僕の方に来て朝の黒い封筒を見せてきた。
「勇悟も届いた?朝ポストに入ってたんだよね」
「早く開けてみようぜ?」
大輝に急かされて穂華は封を開けた。中には手紙とIDらしき番号と名前が書いてあるカードと現金一万円が入っていて僕らは顔を見合わせた。
「と、登録しただけで一万円かよ」
大輝は驚いていたがより目を輝かせた。僕の携帯がなったので開くと人狼ゲーム仲間の修からで修も同じように登録をして封筒が届いたらしい。僕は修に「今日皆で僕の家に集合」とメッセージを送った。大学が終わった夜に修の他に愛希と夏菜も来た。皆同じ内容の物が届いていた。手紙にはゲームの開催は1週間後で各自の家に迎えが来るとの事とその際にカードを必ず持参するようにと書かれていた。その夜は久しぶりに会った事と明日が休みという事もあってお酒を飲みながら一夜を明かした。次の日は全員半ば二日酔いの状態で家帰った。僕はと言うと全員が残していったゴミ等の掃除にため息をついた。1週間というのはあっという間で人狼ゲーム開催当日まで後一日まで迫っていて楽しみだった。いきなり携帯がなって驚いたが通知を見ると穂華からだった。
「もしもし、どうしたの?」「あ、勇悟?気のせいかも知れないんだけど…」
穂華が言うには開催3日前位からやたら視線を感じる様になったとの事で僕は特に感じなかったため気のせいじゃないかと言うと家に来たいと言うので近場の駅まで迎えに行った。駅で待っていると少し怯えた様な顔をした穂華が来た。いつも明るい彼女なので違和感しかない。
「勇悟、いきなりごめんね」「大丈夫だよ。カフェかなんか行く?」
穂華は頷いた。僕は最近よく行くようになったカフェに向かった。穂華が言うには今も視線を感じているらしい。ストーカーの類なのか分からないが不気味感じて僕を頼って来たとのこと。結局、家に帰るのは怖いと言うので僕の家に泊まる事になった。幸いにも僕は現在一人暮らしなので気兼ね無く穂華を家に上げた。着替えとかは僕のを使えばいいと伝えると駅ビルで穂華は女性物の下着だけ購入した。その夜は穂華が心配だったので穂華が寝静まるまで起きている事にして家の辺りを少し警戒していたが特に何事も無く僕も夜中頃には眠りについた。少しだけ奇妙な夢を見た。誰かが狼に喰い殺される夢で僕は遠くで見ているだけだったが狼が僕に気付き襲いかかって来て喰われる寸前で目を覚ました。手探りで携帯を見つけ時間を見ると朝8時だった。穂華を起こそうと立ち上がった時にインターホンが鳴った。モニターを見ると黒服で白髪混じりの男性が外に立っていた。ドアを開けると男性はどうやら人狼ゲーム開催委員会の人で迎えに来たとの事。少し待ってもらえるかと言うと男性は頭下げて車に戻った。穂華は起きていたがまだ寝ぼけていだが出発の事を伝えると急いで支度を始めた。支度を終えて自宅を出ると男性が車から降りてきて後ろのドアを開けてくれた。車内には既に皆揃っていて早くしろよと急かされたし穂華と一緒の居たものだからあれこれいじられてしまった。穂華は必死に言い訳をしていたが逆効果でさらに煽る形になってしまった。ちょっとだけ険悪な雰囲気になってしまったが会場到着までの2時間でそんな雰囲気も忘れて談笑していると運転していた男性が右手をご覧くださいと言うので見てみるとこの車と同じ車が右往左往しているのが見えた。どうやら会場に着いたみたいだ。大輝や修は気持ちを抑えられないのかそわそわしていた。僕はどんだけ好きなんだよと思いながらも内心はそわそわしていた。会場に着くと狼のコスプレをしたバニーガールならぬウルフガールが手を振って迎えてくれた。ウルフガールが車のドアを開けて皆の手を引いて会場内に案内してくれて僕等らに会場内の説明も丁寧にしてくれた。朝食を食べ損ねた僕と穂華はバイキングコーナーが気になって気になってしょうが無かった。どうやらゲームの説明会が始まるまでは自由みたいでホールにはバイキングコーナーでご飯を食べる人や既に意気投合したのか大人数でお酒を飲み交わしている人やゲームコーナーに入り浸る人も居た。とりあえず各々したいことをするため一旦解散して後で合流する流れになった。修と大輝はゲーマーなのでゲームコーナーに走って行って愛希と夏菜は会場内を歩き回りたいと言って僕と穂華はバイキングコーナーに直行した。バイキングコーナーで2人で席に座って食事をしていると穂華が急に辺りをキョロキョロし始めた。
「どうしたの?」「あ、いや、いっぱい人が居るなーって」
明らかに昨日の穂華に戻っていた。顔色が悪い…。
「穂華って人見知り?」「あはは、バレた?」
なんだそんな事かと僕は笑った。少しムキになって怒る穂華を見てまた笑いが込み上げて来たが何とか堪えた。満腹になって少しのんびりしていると取り付けてあった全てのモニターに狼が月をバックに吠える映像が流れて自然と目がモニターにいった。大輝達もすぐに合流した。どうやら説明会が始まるまるみたいだ。ずっと押し込んでいた気持ちが溢れて来て叫びたくなった。映像が切り替わり狼の仮面を被った人物の映像が流れる。
「本日はこの会場にお越し頂き誠にありがとうございます。今からルール説明会を開始します」
僕等は何故か固唾を飲んだ。
「まずはお手紙にご同封いたしましたカードのご説明からさせて頂きます。そのカードは皆様の個人情報となりますので紛失等なく肌身離さずお持ち下さい。不安な方が居ましたらお近くのウルフガールよりカードケースをお受け取り下さい」
ウルフガールが僕等の所に来てカードケースを見せてきた。一応受け取っておこうと話しがまとまりウルフガールからケースを受け取りカードを入れた。ケース自体かなり頑丈に作られていてちょっとやそっとじゃ壊れなさそうで安心した。
「続いての説明はゲームルールになります。ルールは皆様がご存知のルールを適用させて頂きますが役職は人狼と市民のみに限定させて頂きます。更には御友人方とご参加頂いてる方には大変申し訳ありませんがゲーム中はこちらで分けさせて頂きます」
僕等は少し不安になったがその分多くの人とゲームが出来ると思い逆に嬉しかった。
「続きまして細かいゲームルールをご説明いたします」
ルール1、発言は平等になるようプレーヤーは必ず1回以上すること。
ルール2、プレーヤーの持ち時間は各3分。
ルール3、追放の際に票が被ったプレーヤーは2分の間弁解の時間が設けられる
ルール4、ゲーム中は如何なる事があろうとゲームを放棄出来ない
「以上がルール説明になります。質問がある方は筆記台をご用意しましたのでお書きになられましたらウルフガールの方に提示をお願い致します。ではゲームを開始致します」
その合図で数人がウルフガールに連れられて奥の部屋に入って行った。奥のモニターには部屋の様子が映し出されてゲームに参加していない人達もゲーム進行を見られる使用になっていた。そして、これが最も非情で残酷なゲームの始まりだった。
「これよりファーストゲームが開始されます」
部屋には6人のプレーヤーが席に座り挨拶をしていた。IDカードを所定の位置に置くと役職がランダムに振り分けられた。最初の人狼は眼鏡を掛けた気の弱そうな女の子だった。こういう人が人狼だと分かりづらいのは良く知っている。部屋が暗転して夜が来た事を知らせる。眼鏡の女の子が最初の犠牲者に決めたのは2番の席に座って居たサラリーマンを選択した。部屋が明るくなり朝が来た。部屋には空席になった2番の椅子と生き残りの5人。部屋の中のモニターと場内のモニターには椅子に拘束されたサラリーマンが映し出された。どうやら別室に居るらしくサラリーマンはひどく怯えていた。会場内がざわつき始めると何かを引きずる音が聞こえてきた。良く耳を澄ますとどうやら鎖が地面に擦れる音だった。突如、サラリーマンの悲鳴が場内全てに響いた。映し出されたのは無惨にも引き裂かれたサラリーマンの遺体だった。場内に居た全ての人の嗚咽、悲鳴。それは部屋に入ったプレーヤーも同じだった。全員が顔面蒼白になっており眼鏡の女の子以外にも何人か吐きそうなのを必死に堪えていた。そして、司会者が淡々とゲームを進行していく姿は恐ろしくもあった。
「朝になりました。昨晩の犠牲者は2番の方です。では追放者を決める話し合いを始めて下さい。皆様の発言が終わり次第審議の時間に入らさせて頂きます」
部屋の中は静かだった。当たり前だ。あんなもの見せられて話し合いが出来る筈がない。すると、一人が口を開いた。
「ま、まずさ市民は手を上げようぜ?嘘とか無しでさ?そうすれば…」
その一言に一人の女性が反論した
「嘘とか無し?人が死んだのよ?私は死ぬのは嫌よ!」
馬鹿だ。この状況でその発言は命取りになるのは火を見るより明らかだ。その後も舌戦が繰り広げられたが眼鏡の女の子は依然黙ったままだった。そして必然的に眼鏡の女の子に発言の順番が回ってきて眼鏡の女の子はたった一言だけ言った。「人狼は…私です」と。全員の発言を確認したのか司会者は言った。
「これより審議の時間です。目の前のモニターにて誰を追放するか決めて下さい」
会場内のモニターには誰が何票集めたかの集計が映し出された。最も票を集めたのは眼鏡の女の子では無く最初に発言した男だった。
「審議が完了しました。追放者は1番の席の方です」
そう告げられた男性は慌てふためいて逃げ出そうとしたがドアは固く閉ざされており男がいくら叫ぼうと開く事無くゲームマスターの取り巻きに押さえられて席に連れ戻された。
「では、追放者を処分致します」
司会者が手を上げると男の首が飛んだ。一瞬の出来事に全ての時が止まった。部屋には血飛沫が飛び散って紅く染め上げた。会場内の人達と部屋の中の人のほとんどが吐いた。僕はギリギリで耐えたが横で穂華が苦しそうに嘔吐いていた。大輝達の方を見ると大輝達もなんとか耐えていたが愛希と夏菜は駄目で吐いていた。突如、ゲームマスターの画像に切り替わりこう告げた。
「先程のルール説明の時に言いそびれておりました。追放者と人狼に選ばれた物は先程の様に死にます。ご了承下さいませ」
会場内に居た達は出口に殺到した。必死にドアを叩き叫んでいた。無駄だと僕は判断した。ルール説明ではいかなる事があってもゲームを放棄出来ないと言っていたからだ。こんな時に冷静で居られる僕はおかしくなったのかと自問自答する。ゲームマスターは続けた。
「なお、ファイナルステージをクリアした方には望む物を何でもあげましょう。では、ゲーム続行です」
ゲームマスターがそう言うと映像は部屋の中に切り替わった。変化と言えば血飛沫は綺麗に掃除されて空席になった1番と2番の椅子。生き残りは4人。
「では、夜が来ます」
部屋が暗転して生き残った人狼である眼鏡の女の子はまた自分の手で人を殺さなければならない。眼鏡の女の子が選んだのはあの時真っ先に反論した5番の席に座っている女性だった。部屋が明るくなり朝迎えた。空席になった5番の椅子。映し出されたのはサラリーマンと同じ様に拘束された女性はひたすら暴れて居たが手足が動かせない為体をよじるしか無くあの鎖の音が聞こえてきた。女性からの悲鳴は無かったが映し出された遺体は原型を留めていないほどぐちゃぐちゃに潰されていた。そして映像が切り替わり生き残った3人と空席になった3つの席。司会者は淡々と告げる。
「朝になりました。昨晩の犠牲者は5番の方です。追放者を決める話し合いを始めて下さい」
話し合いになんてならなかった。問答無用で6番の椅子に座る眼鏡の女の子が追放者に選ばた。女の子は抵抗することなく頷いた。ゲームマスターが手を上げると女の子の首が飛んだ。血飛沫が部屋を紅く染め上げた。そして司会者は告げた。
「市民の皆さんおめでとうございます。見事人狼を退治しました。部屋のロックを開けます」
奥の部屋から出てきたの最初に入って行った人達の半分も居なかった。どうやら同時にゲームは進行していたらしくモニターには8つの部屋の結果が映し出された。その内3つの部屋は人狼の一人勝ち。後は市民の勝ちだった。その後も狂気に満ちたゲームは淡々と進んで行った。そして、僕等のメンバーから修と夏菜が連れて行かれた。止めようとしたが黒服に逆に止められ見送るしかなかった。お願いだから生きて帰って来て欲しいと願うのとせめてあの2人の部屋だけは映さないでくれと願うしかなかった。モニターに映されたのは最悪にも修の部屋だった。役職が振り分けられて修は勝利数が多い市民側だった事にほっと胸をなで下ろした。夏菜も市民側であって欲しいと強く思った。ゲームが開始されて最初の犠牲者を決める夜が来た。人狼は4番席に座る男性だった。そして最初の犠牲者は1番の席に座る女の子だった。女の子は複数の仮面を着けた人達に無惨にも陵辱され殺された。その映像を見て歓喜する者も居た事に僕は憤りを感じたが堪えた。朝の審議では修は得意の舌戦を繰り広げなんとか生き残り無事に2回目の夜も越えた。僕なら先に厄介な修を選ぶがあの人狼は選ばず他の人を選んだ。勝負を楽しみたいのかそれとも気まぐれなのか分からなかったがまずは安心した。2回目の朝には修の勘が当たり見事人狼を退治した。修の部屋で生き残ったの3人。かなりギリギリだった。修達が出てきて僕等は再開を喜んだ。後は夏菜が無事に出てきてくれればと思いモニターを見たことを後悔した。映像には夏菜が裸で磔にされていてその後大量の槍で貫かれて殺された。その映像を見た僕等は吐いてそして泣いた。1番仲の良かった愛希は気絶していた。全てのゲームを終えて部屋を出て来る人の中にはガッツポーズをして出てくる人も居た。僕の怒りは限界を迎え拳を握り締め立ち上がると穂華が必死に僕を止めた。
「これより一時休憩に入らさせて頂きます。皆様ごゆるりとおくつろぎ下さい」
ゲームマスターは何事も無かったかのように言った。ふざけるな…命を何だと思ってやがる…。大輝が後ろで呟いた。僕も同じ意見だ。ウルフガールが飲み物を持ってきたが受け取らなかった。生き残った大半の人は意気消沈しきっていて来たときには熱気で溢れかえっていた会場は静まり返っていた。愛希はまだ目を覚まさない。トラウマになってもおかしくはないレベルの傷を負っただろう。ウルフガールが僕等はの所に来て僕を呼んだ。どうやら僕の番の様だ。10分後にもう一度呼びに来るとのことだった。僕は息を深く吸い込み意を決して立ち上がると穂華が僕の腕を引っ張った。
「勇悟、生きて…帰ってきてね?」「頑張るよ」
穂華は立ち上がって僕の顔に迫って来た。僕の唇と穂華の唇が重なった。生まれて始めてのキスは素直に嬉しい物では無かった。ウルフガールに連れられて部屋に入る。映像とは違って血の匂いがした。僕は6番の席案内されて座った。必ず勝ってやる…。もし、人狼側なら全員喰い殺してやる。そしてゲームが開始された。役職は…人狼。僕が得意とする役職だ。
「勇悟が人狼か…」「大輝…勇悟大丈夫だよね?」「おう、大丈夫だ」
夜が来て僕が最初の犠牲者を選びだす。厄介そうなのは3番か4番だ。なら、しらみつぶしだ。僕は3番を選んだ。朝が来て目の前の小さなモニターには3番の席に座っていた奴が殺される映像が流れる。感情的になっちゃ駄目だと自分に言い聞かせ審議の時間になった。流れを作んなきゃ。
「僕の名前は勇悟です。よろしくお願いします。皆さんは誰が怪しいと思いますか?僕的には4番の方が怪しいと睨んでいますが…」
他のプレーヤーはあれこれ論議して追放者を決める時が来た。僕は4番に入れるつもりは最初から無いので5番の方を選択した。最初の追放者は口数が少なかった2番に決まり首が飛んだ。そして夜…。僕の読みは的中して4番のプレーヤーはやはり1枚上手だったが僕は特に問題なく4番を喰い殺す。朝が来て4番のプレーヤーは死んだ。残りは1番と5番と僕。上手くいけば勝てる。落ち着けと言い聞かせ審議を迎えた。最初の発言は今まで口数が少なかった1番からだった。
「え…っと勇悟さんでしたっけ?何でそんなに落ち着いて居られるんですか?まさか…人狼なんじゃないんですか?」
「僕が人狼だとしたら女性から先に仕留めますよ?そういうあなたこそ人狼なのでは?」
これで5番の奴の考えは揺らぐ。何故なら自分が人狼と言えば怪しまれるし市民を強調しても怪しまれる。加えて自分の一票で勝敗が変わる。5番は発言せず審議を迎えた。僕は1番に票を入れた。多分1番は僕に入れただろう。全ての票が集まり集計の結果、1番の首は飛んだ。5番は膝から崩れ落ちた。そう、僕勝ちだった。5番は僕を恨めしそうに睨んで死んでいった。部屋を出ると穂華が駆け寄って来て僕に抱きついた。だけど、これで僕は人殺しの仲間入りだ。後戻りは出来ない。次の対戦相手が夏菜の仇なら僕が喰い殺す。その後の大輝のゲームでは大輝が人狼となり圧勝。まともな心理戦は出来ないだろう。その時の運で自分の生き死にが決まる。部屋を出てきた大輝も大分憔悴していた。
「生き残った皆様方おめでとうございます。これにてファーストゲームは終了とさせて頂きます。明日からセカンドゲームが行われます。皆様の為に本日の寝室をご用意しました」
モニターに映し出されたゲームマスターが後ろの出口が開いた。会場を出るとウルフガールが立っていて部屋に案内してくれるとのこと。ウルフガールの後ろに付いて行くと僕等の部屋に着いた。中はかなり豪華に作られており部屋に入ると夕食の時間と明日迎えに来る時間を伝えウルフガールは部屋から出た。僕等はやっと一息ついた。愛希は先に連れて来てもらったらしく布団から出てきた。目が赤く腫れぼったい為かなり泣いた事がすぐに分かった。愛希は大丈夫と言っていたが大輝がかなり心配していた。その夜は食事を少しだけ食べて早い内に眠った。夜中に僕は愛希に起こされた。どうやら一人でトイレに行けないから付いてきて欲しいとの事。あんな事があった夜だからと思い一緒に行く事を快諾した。愛希は僕の手を握り締めていた。トイレに入ると待っててと言われたので冷蔵庫から備え付けの缶コーヒーに飲んで待っているとトイレの中で愛希が吐いて苦しんでる声が聞こえた。
「愛希…」「勇悟…ごめん。今は見られたくない」「一人じゃ吐ききれないでしょ?愛希は酔った時もそうなんだからさ」「…うん」
中から鍵が開く音がしてドアを開けると泣きながら空っぽの胃から込み上げてくる物を必死に出そうとしていた。僕が優しく背中を擦ると胃液だけが愛希から吐き出される。愛希の背中は震えていた。愛希が外の空気を吸いたいと言ったのでふらつく愛希を半ば支えながら窓の側に連れて行った。椅子に座ると少し落ち着いた様で冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し愛希に渡した。愛希は一口飲むと泣き崩れた。僕は愛希の隣に座り抱き締めた。愛希は泣き止まず僕は隣でただ抱き締めて頭を撫でるしか出来なかった。少しすると穂華も起きてきた。事情を説明すると穂華も愛希を抱き締めてお互いに泣き出した。穂華も相当我慢していたんだと思うと胸が張り裂けそうになり今すぐあのゲームマスターを殺したい衝動に駆られた。だけどあいつを殺した所で夏菜は戻って来ない。そんなの百も承知だ。なら何をすべきかそれは最後まで生き残ってあいつに吠え面をかかせてやる。朝が来てウルフガールが迎えに来た。始まるんだ、セカンドゲームが…。
人狼ゲーム みぞくち そうた @reo12100604
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