第5話 目覚めし力

魔力増量の修行を続ける事3ヶ月。

やっと成人男性レベルの魔力量まで達した俺は何とも言えぬ達成感と絶望感を同時に味わう事になった。

というのも――――――――



『システムオールグリーン――――バイタル正常――――おはようございます。 システムセーフモードで起動中です』



頭に響いてくる音声―――


「…………」


やはり、夢ではないらしい。

試しに俺は頬をつねる。

痛い。 現実か…

そうだ―――やっと成人男性レベルまで達した魔力はどうなってるのか。

何時もやって来た事を試してみる。 が――――

指から出た炎は3ヶ月前の状態まで劣化していた。


「はぁ…」


思わずため息が零れる。


『精神の乱れを感知――――どうされましたか? マスター?』


「はぁ~~~…」


どうしたのかと聞かれたのならば―――俺の3ヵ月を返せとお前に言いたい”ナビ”。


「つまりなんだ? 俺の魔力が一定量に達したら、それを触媒にお前が復帰できる予定だったと?」


『またそのお話ですか、マスター。 えぇそうです。 その御身体になられたマスターにアーマーを最適化するには、この世界の魔力なるものが必要でした。 そうしなければ起動も不可能でしたので―――で? それが何か?』


「だからといって全部持って行く奴があるか!? そこそこの量だったろ! そこそこの!」


大事な事なので2回言う。


「おまけにお前はこの世界が異世界だってのを知ってるし。 魔法の存在まで認知してるとは―――どうなってんだ?」


『わかりません。 理由は不明ですが、元々のデータとして私の中へ残っていました』


「ほぉ? で? ここも”あいつ”の作った世界だったりするのか?」


あいつとは以前の世界で好き勝手やっていた人間の事だ。


『ワールドマスターの話でしょうか? でしたらご安心を―――私”インフィニティアーマー・ナビゲートシステム”面倒なの省略して、ナビは―――既にワールドマスターの手を離れ――1つのシステムとして独立しています。 正確に言えば独立型のAI―――と言ったところでしょうか』


「AIだと?」


確かこいつはワールドマスターが作ったシステムの1つで”神の領域≪データサーバー≫”から転送される情報を元に逐一報告―――監視していた存在だ。

それが独立型のAIだと?

おいおい…なんの冗談だ?


『断言はできません。 ですが、どうやら私専用のサーバーがこのアーマー自体に備わっている―――私自身、何を根拠に発言しているのかも不明ですが…そんな感覚がする? とでも言うのでしょうか?』


おい、何故疑問形だ。

と言うよりも、問題はそんな所じゃない。

こいつがただの”システム”なら俺もなんとなく理解出来たと思う。

しかしどうだ、蓋を開けてみればまるで他人と話している様な―――そんな気がしてならない。

いいや―――言い方が悪かったな。 人と会話している様な感覚がする。


感情がある。 そう錯覚してしまうレベルで会話出来てしまっている。


「まぁ、お前も俺も――――生まれ変わったという事か?」


『そうなるのでしょう。 マスターも夢は果たせた様で、何よりです』


ナビの発言に俺は首を傾げる。


「ん? 夢を果たした? いや、俺は死んで―――」


”死んではいない”そう発言しようとした所でナビが割って入る。


『マスター。 現在のマスターの言動―――行動―――全てを踏まえても”以前のマスターの面影”は微塵も感じ取れません。 つまりマスターは”一度死を迎え”新たに生まれ変わった――――そう私は解釈しています。 そして同じく私も死を迎え―――再び生まれ変わった。 ”死を与える、殺戮兵器”ではなく、今度は”生きる為の力”としてマスターの御傍に―――』


「ふっ…お前にそんな事を言われる日が来るなんてな? 仕方ない…この力、今度は生きる為に使ってみるとするか! なぁ? ナビ!!」


『これからも、よろしくお願い致します。 マスター』


「おう」


と意気込んだ所で俺はある事に気が付く。


「あ…」


『どうされました? マスター?』


「これ、アルメイアに報告しといた方がいいよな?」


『肯定―――あの方に報告しなければ殺されるかと―――』


「で、ですよね~…」


―――――――その日の夜。 俺は昨日起こった事を包み隠さずアルメイアに話した。

魔力増量の修行をしていたら突然、転生前の力が使える様になったと―――が―――等のアルメイアはと言うと。


(なにっ? 転生前の力が使える様になったぁ!?)


(そうなんだよ)


(本当にか!?)


(あぁ…)


(あ、ありえん―――スレイいいか? よく聞け?)


突然神妙な雰囲気を漂わせたアルメイアは発言を続けた。


(異世界人というのは以前話した通り。 例外は無く力の制限が成され―――そして信仰性に則って行動する。 それが普通なんだ。 しかしお前は違う。 全く別物の力を何の変哲も無く持って来て、何食わぬ顔でこの世界に馴染んでしまっている――――つまり)


(つ、つまり?)


一体何を言われるのだろうか、この真剣な物言い―――まさか何か重要な問題でも―――


(お前は特別と言う事だな!? ぬははは!! そうだろう、そうだろう!? 例外も例外! とんだ化け物だからなお前は!! ぬははは!! 流石は私のスレイだ!! ぬっはははは!!)


(へ? そんだけ?)


(ん?)


(い、いや。 真剣な物言いで話出すから何か問題でも―――)


(別にないぞ? そもそも、お前の身体は既にこの世界の存在と化している―――つまり、お前は女神側から見ればこの世界の人間であるのは確か。 という事はだぞ? 好き勝手出来る訳だ、なぁ? ぬひひひひひ…)


その後アルメイアは俺に「ならば外出も可能だろうな。 外出を許可する! しかし!! しかーーし! 遠い所に行ってはならんぞ!? 絶対だぞ!?」と告げ。

1人で何かをブツブツ言っていた。

彼女の事だ。 何か良からぬ事でも企んでいるんだろう。

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黒き森の魔女と白の悪魔 @zaku0083

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