あとがき!

 あれは、私が、高校生だったとき。

 八王子の子が書いた七福神のイラストを見た瞬間、頭に「?」が浮かんだ。


 この七福神、なんかメンバーおかしかないか?

 弁天さまともう一柱ひとり、この女性キャラは一体誰?


 とりあえず、クラスメイトに聞いてみた。


「ねえ、この七福神の絵、なんか変じゃない?」

「えっ? う~ん、まあ正直、微妙っちゃあ微妙だけど、味があっていいんじゃないかな」


 いや別に、画力のそういう話、してないし。


 一般的な高校生は、七福神になぞ興味ないのか、誰も気にしちゃいないようだが、こっちはそういうの、スッゴく気になるんだよぅ。


 ああっ女神さまっ、あなたはどこのどなたなの?


 その疑問は、あっさり解決した。

 作中でも述べたとおり、八王子七福神は、八にちなんで、正規メンバーに吉祥天を加えた八人もとい八柱組のユニットなのである。

 つまり、あの女神は、吉祥天だったのだ。なるほどなるほど。


 あれっ、でも、数は七柱しちにんであってるような……?


 さらなる疑問が生じたが、これも、のちに解決した。


 福禄寿と寿老人。

 道教の神である彼らは、単にご利益が似ているため、あるいは、どちらも同じ南極寿星じゅせい(カノープス)を神格化した神であり、同体異名の存在だと考えられることから、どちらかをメンバーから外し、空いたところに別の神サマを入れて、七福神にする場合もあるのだとか。


 つまり、あのイラストは、寿老人の代わりに吉祥天を入れてみた、ということなのだろう。

 まあ確かに、じいさん二柱ふたりより女神さま二柱ふたりの方が、ビジュアル的にも華やかで有難いよね。うん、眼福眼福。


 ちなみに、七福神の成立は室町時代。

 もともと福の神としてポピュラーな存在だった、恵比寿さまと大黒さまに、北方の守護仏である毘沙門天を加え、さらに布袋じょう、寿老人、福禄寿という中国の福の神を合わせていき、そして、当初は弁財天ではなく、天鈿女命アメノウズメという日本の女神を入れて、七福神にしたらしい。

 天鈿女命は、天照あまてらす大神おおみかみあまのいわへ引きこもっていたとき、その前でセクシーなダンスを踊った女神であり、弁財天同様、伎芸の守護神とされている。


 彼女の他にも、猩々しょうじょうしょう稲荷いなり のかみに吉祥天、宇賀神、空蔵くうぞうさつなど、様々なメンバーが在籍していたこともあり、また人数も、ときには六神だったり八神だったりしたものが、「七難即滅しちなんそくめつ 七福即しちふくそくしょう」というお経の文句から七神に落ち着いたのだとか。


 とはいえ、こういうものは諸説あり、調べれば調べるほど、違うことが書かれていて、だんだんややこしくなってくる。

 まあそれが、民俗学の、面白いとこでもあるのだけれど。


        *


 というわけで、以上、あとがきという名の蛇足、いや補足でした。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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