第7話


いつからだろう。


どこに行くにも、何をするにも、真央と一緒にいるようになったのは。


いつからだろう。


真央がいれば大丈夫。


そんな風に思うようになったのは。


そんなことを思いながら、私は過去を思い出す。



遊ぶ時はいつも一緒で。





『ここにいれば見つからないよね? 』


『しっ! 鬼がきた! 』



隠れんぼなんかではいつも一緒に隠れて。


困った時はいつも助けてもらって。






『7×7…えっと……。』


『……49。』


『49! 』



当てられて答えが分からない時だって、真央が小声で教えてくれた。



真央は何でもできる。


何もできない私とは正反対だ。


だから、私ができないこと、分からないことは真央が助けてくれた。


なのに…。





「……はぁ…。」


私はそんなことを思いながら、先に寝たレオンの背中を見てため息をつく。




『その幼馴染は今、いない。」




レオンがさっき言った言葉が、頭によぎる。


「…分かってるよ……。」



そう、分かってる、そんなこと。


でも、もうどうしたらいいのか分からない。


レオンは村にいてもいいって言ってた。


…そうしようかな。


…でも、その後レオンは1人で魔王をたお…じゃなくて、覚醒を阻止しに行くんだよね。


1人でできるのかな…。




『……ただ俺は、剣が幼馴染みではなくお前を勇者として選んだのは、偶然や間違いなどではないと思っている。』





レオンの背中を見ていると、さっき言われた言葉がよぎる。



確かに、鍵は真央が触っても何も反応がなかった。


それはやっぱり、私が勇者に選ばれたということなんだろうか。


……真央、どうしてるかな。


この世界に一緒にきたと思ったんだけどな。



「…真央…私、どうしたらいい…?」


そう呟いてみても、いつものように返事は返ってこない。


いつも真央が助けてくれてた。


いつも真央が側にいた。


いつも…。



『俺だって、いつまでもお前と同じテスト受けるわけじゃないんだからな。』




真央が口ぐせのように言っていた言葉が私の頭をよぎる。


…分かってる。


いつかは真央がいなくても頑張らなきゃいけない時がくるってことくらい、分かってるはずだった。


でもこんなに早くくるなんて。



そんなことを考えていると、ユリから貰った剣が目に入る。



…ううん、きっと分かってなかった。


真央がいない私なんて、何もできないから。


でも、鍵は私を選んでしまった。


それはもしかしたら真央にできないことが、私にできるかもしれないということ。


…そんなことできるだろうか。


私はー。


















次の日の朝。



「行くぞ。」


準備を終えた俺は唯にそう言う。



「う、うん。」


唯は返事をすると遅れて俺についてくる。


昨夜の事もあってか、会話をあまり交わしていない。


唯はなんだかそわそわしているようにも見えたが、気のせいだろう。



「あ、あのさ、レオン! 」


そんなことを考えていると、唯が意を決したようにそう言う。


「何だ。」


「私に、剣を教えてくれるって言ったよね? 」


「…ああ。」



言ったが、勇者をやめるお前が覚えてどうするんだ。



「…じゃあ、教えて。私、勇者やめないから。」


「…は?」


俺は唯の言葉を聞いて、耳を疑う。


しかし、唯の方を振り向くとそう言っている目は真剣だった。



…ふっ、どうやら少しは勇者らしくなってきたみたいだな。




「あっ、でも優しく教えてよ! 初心者だからね! 」


そう慌てて言う唯の頭を、俺は手で押さえる。


「痛っ! 」


「教えてく だ さ い だろう? 」


「教えてください〜。」



そんな感じで、俺達は覚醒の地への旅を続けるのだった。




【つづく】

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勇者と魔王 @hah

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