新作を書きたいけれどなかなか良いアイデアが思い浮かばない……。
そんな状況の人におすすめなのが、このコラム集です。
本作で語られるのは、AIやビッグデータなど、現代技術に関するコラムの数々。ただ単純に知識をひけらかすのではなく、スマートフォンや検索エンジンなど生活の身近なところから話を広げたり、SF小説で書かれている世界と現代を比較したりと、巧みな話術で読者の興味を惹いて、自分のような門外漢にもわかるように最新技術に関するよもやま話を繰り広げていきます。
また、本作で重要なことの一つに、算盤や本棚、あるいはお箸など日常で古くから使われている道具に関するコラムもあるのですが、そのときの語り口が現代技術を紹介するときとあまり変わらなくて、それなのに面白く読めるんですね。
つまり本作の面白さは、ただ単に最新技術の目新しさだけではなく、その技術を基にした作者の発想のユニークさにあるのです。
我々が普段当たり前のように見聞きしたり使っていたりするものに対して、新しい角度から光を当てて新鮮なコラムに仕上げてみせる。
こうした発想から生まれるアイデアもあるのではないでしょうか。
たとえば「このコラムで紹介されている技術をファンタジー世界に応用させようとするとどうなるか?」。このような考えが新しい発想の手掛かりになるかもしれません。
(小説を書く参考になる作品4選/文=柿崎 憲)
最近『天空の地図』(アン・ルーニー著)という本を読みました。太古から現代までの人類の絵画や星図、スペクトルやレーザーなど、様々な方法で夜空の星々を捉えたナショナルジオグラフィック出版のビジュアルブックです。
その本を読んでひとつ気づいたのは、一個の対象にもさまざまな側面があり、全てをひとりで考えるのは難しいな、ということでした。
ひるがえって『ミネルバの梟は充電後に飛び立つ』はそんな「ひとりで考えるのは難しいな」と思うテクノロジーに対してのちょっとした面白い見方や考え方を教えてくれます。普段まったく想像していなかった目から鱗な見方もあり、SF好きでなくとも、何となくニュースなどで見聞きしたキーワードでピンと来た方にもオススメです。この作品を読むとパソコンやスマートフォンなどの身近なテクノロジーに触れる時間も、以前より少し楽しくなるかもしれません。
個人的には本棚に関するコラムをほくそ笑みながら読みました。ジャンルもカテゴリもほぼ不規則にバラバラに蔵書している私ですが、コラムを読んでからふと本棚を見たら『芸術と科学のあいだ』(福岡伸一著)の奥に『虚数』(スタニスワフ・レム著)があったので思わず苦笑いしました。
今後の更新も楽しみにしています。