第8話 大火事二日目
「おはよう。」
「あ、おはよう。坂田。」
「クマ、ひどいぞ。」
「お前もな。」
ガラガラガラ。
教室に入ると、待ってましたとばかりに囲い込まれた。
「お前ら、大丈夫かよ…」
「まだ、頭んなかぐちゃぐちゃだよ。」
「ありえねぇよなぁ…福田のやつ何考えてるんだろうな」
「俺らもそれが知りたい。」
ガラガラガラ。
悪役、つまりターゲットの登場を告げる音が鳴ると、一斉に無言のブーイングが始まった。
それがきっかけだったかのようにヒソヒソとしかし確実に声は上がり始めた。
「え、何々?僕なにかした?」
ありがとう、福田君。君のおかげで余計に俺らは遊ぶことができるよ。
「てめぇ、何かした?じゃねぇぞ!人の彼女き、キスなんかしておいて!」
「そうだそうだ!ありえねぇぞ!」
「き、キス????!!!!何のことかさっぱりだよ。」
またまたありがとう、福田君。これで炎はしばらく沈静化することなく燃え続けるだろう。
「あのさ、福田君。」
「誤解だよ、坂田君。それに神田君も。」
「まだそう言い張るんだね。俺たち友達だと思ってたからこんなことはしたくはないけど…これ、見てそれでもまだしてないって言い張るの?」
「あぁ、これのことか…だから僕はちゃんと言ったのに、やめるべきだって。」
「どうゆうことか説明してくれる?」
そこで出てきたのは木崎さんとめぐが無理やりしたって話。真実はそうだ。でも、現実はというと、必ずしも真実とは合致しない。
「違うよ!神田、私にもう一回説明させて!」
「うん、俺も聞きたいし。」
「あの日、福田君と遊びに行って、確かにプリクラに誘ったのは私とねむちゃんだけど、ほっぺにちゅーしてって機械が指示したときはさすがに私たちは断ったよ?
でも、福田君が減るもんじゃないし、って言って無理やり頭をくいってやったんだよ!信じて…」
やっぱりめぐは人の心を味方につけるのが上手だ。
いつもは気丈に振舞っている女子が彼氏の信頼を失いそうになって泣く。
自然かつ、同情をせざるを得ない状況をもう一回醸し出す。
これで後は周りが燃やしてくれるのを一緒になって燃やせばいい。
君に宛てたラブレター サクニジ @sakusaku0510
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